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甲子園がすべてではない 弱小校にも利あり

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今年の全国高校野球選手権は第100回記念大会にふさわしく、記憶に残るシーンが多かった。大阪桐蔭の史上初となる2度目の春夏連覇、金足農の秋田勢103年ぶりの決勝進出、済美(愛媛)の史上初の逆転サヨナラ満塁本塁打――。金足農を筆頭に、2度の2桁得点をマークした高知商(高知)、大阪桐蔭と接戦を演じた高岡商(富山)と公立校の奮闘も目立った。

彼らの活躍を目にすると、自分が球児だったころが思い出された。大阪府出身の私は小学生のとき、リトルリーグの大阪市西区の代表チームに入って全国大会決勝に進出。中学では軟式の部活で大阪市のベスト4までいったこともあり、いくつかの私立高校に勧誘された。特に熱心に誘ってくれた北陽高校(現関大北陽)には練習を見学にいき、入学したいと思ったのだが、母親に「できたら公立にいってほしい」と言われ、最終的に大阪府立泉尾(いずお)高校に進んだ。

泉尾の入学試験を受けにいったとき、野球部は練習しているかなと思ってグラウンドを見ると、2人の部員がキャッチボールをしていた。「入りますからお願いします」と言って参加させてもらうと、私がぴゅっと投げた球が捕れない。がくぜんとした。

練習試合断られ、発奮材料に

入ってみると、3年生が3人、2年生は2人のみ。新入生は20人ほど入ったうち私を含めて10人が残り、何とか試合ができるというありさまだった。夏に3年生が引退すると、一大勢力である1年生がチームの中心になった。試合で失策をすれば容赦なくやじが飛び、悔しくて自主的にノックを100本も200本も受ける空気が生まれていく。弱かったため、練習試合をしてくれる学校があまりなかったのはつらかったが、そのことが発奮材料にもなった。「断られたところにいつか公式戦で勝ってやる」と。

ふつふつと湧き上がるエネルギーが3年生になって爆発した。夏の地方大会2回戦の近大付戦。早々に優勝候補と当たったことで、仲間の一人は「もっと上にいけると思ったのに」と戦う前から白旗を揚げていたが、投手だった私は諦めなかった。結果は完封勝ち。続く春日丘にも完封で勝ち、4回戦ではあの北陽も破った。準々決勝で大商大高に勝って4強入り。大会前、ある新聞に「泉尾はベスト4の力がある」と書いてあったが、その通りになった。

ただし、快進撃もそこまでだった。浪商(現大体大浪商)との準決勝は1-9の大敗。連投の経験がなかった私の球に、準々決勝までの威力はなくなっていた。この年はPL学園が浪商を下して優勝するのだが、日程の余裕があれば、たとえPLが相手でも打たれない自信があった。ただ、負けて泣いた1年、2年のときと違って、投げきったという満足感の方が大きかった。打たれない自信はあっても決して甲子園に出ることを狙っていたわけではなく、「練習試合をしてくれないチームに勝ちたい」という目標が達成できただけで満たされた。

当時対戦したなかで後にプロ入りした選手は多い。近大付の中司得三と、大商大高の森口益光の両エースはともに近大を経て、中司は巨人、森口はドラフト1位で南海(現ソフトバンク)に入った。1学年上の此花商(現大阪偕星学園)の金城基泰さんは広島で20勝投手になった。此花商はよく練習試合をしてくれた学校で、いつも金城さんと私の投手戦に。どちらかが打った方が勝つという、典型的なワンマンチームだった。

練習試合といえば、捕手のサインに私が首を振っても同じサインを出されたことがあった。3回首を振ってもサインを変えないので、捕手を呼んで「違うサインを出せ」と言うと、「いや、俺はこれがいいと思う」。たまりかねた私は「それやったらあかん。代われ」と言って、捕手と三塁手を交代させた。監督は特に何も言わず、まさにワンマンだった。

主体的に練習、一定の成果

よくいえば選手の自主性に任されたチームだった。合宿をするのに自分で茶道部の施設を借りにいったり、自ら下級生を早朝トレーニングに誘ったり。弱いチームだったが、自分たちの力で強くしようと主体的に取り組んだからこそ、練習時間やグラウンドの制約があったなかでも、対戦相手がなかなか見つからなくても、ある程度の成績を収められたと思っている。

その点、今はどうやって強豪の高校に入るかを重視している選手が多い気がする。高校の方も強化のためには地元の中学生を集めるだけでは足りないと、他県から優秀な選手を呼んでくるのに必死だ。ただ、それも行きすぎると逆効果になる。知人に聞いた話では、地元のある高校の野球部はよその県からきた選手ばかりで、「素直には応援できない」と話していた。

私の妻が卒業した佐賀の伊万里高校が今年、春の選抜大会に出場した。春夏通じて初の甲子園大会出場とあって前夜祭のようなイベントが開かれ、多くのOB、OGが集まったという。もちろん妻も参加し、「すごく楽しかった」と言っていた。これがいろいろな地域から選手が集まっているとなれば、はたして卒業生がどの程度一体感を持てるだろうか。今回の金足農の快進撃が地元秋田はもとより、全国的なブームを巻き起こしたのは、吉田輝星投手の鉄腕ぶりはもちろんのこと、ベンチ入りメンバー全員が秋田県内の中学から入学したことと無関係ではないだろう。

すべての都道府県から少なくとも1校は出場する夏の高校野球は郷土対抗の側面を持った大会で、地元出身者が少ないと本来の趣旨から外れることになりはしないか。私のように甲子園に出ていない選手がプロ野球界にごまんといることを考えても、甲子園に出ることがすべてではなく、強豪校に進むことが絶対でもない。進路で悩んでいる中学球児がいたら、こう伝えたい。「弱いチームでやるメリットもたくさんあるよ」

(野球評論家)

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