汚職でアルゼンチン前大統領に家宅捜索、左派に打撃
【サンパウロ=外山尚之】アルゼンチン警察は23日、汚職に関連した疑いで左派のフェルナンデス前大統領の自宅や別荘を家宅捜索した。フェルナンデス氏は上院議員として免責特権を持っていたが、議会上院が22日夜、特権の剥奪を可決した。2015年まで続いた左派政権による巨額の収賄は国を揺るがすスキャンダルに発展し、次期大統領選にも影響を与えそうだ。
警察はフェルナンデス氏が首都ブエノスアイレスや南部カラファテなどに保有する住宅や別荘など3カ所を捜査した。
捜査の背景には、今月に入って発覚した「賄賂のノート」と呼ばれる汚職疑惑がある。有力紙ナシオンが報じ、捜査当局が建設会社幹部のほか、フェルナンデス政権時の政府関係者などを相次ぎ逮捕したことで火が付いた。
ノートは左派政権の05年から15年の間、当時の政府高官の運転手が企業と政府要人の間の賄賂の受け渡しの様子を克明に記している。建設会社などが国からの事業を受注するため、政権関係者に恒常的に賄賂を渡していた疑いがもたれている。中でもフェルナンデス氏は汚職の本丸とされ、連邦裁判所が免責特権の剥奪を求めていた。
現政権を担う右派のマクリ大統領は23日、「350億ドル(約3兆9000億円)が彼らのかばんに入ったようだ」と述べ、フェルナンデス氏らを「泥棒」と強く非難した。
アルゼンチンではフェルナンデス政権で経済財政相や副大統領を歴任したブドゥ前副大統領が7日に別件の汚職で有罪判決を受けたばかり。フェルナンデス氏にはマネーロンダリング(資金洗浄)の容疑もかかっており、当時の左派政権による国の私物化が明らかになっている。
4月に始まった通貨下落や国際通貨基金(IMF)への支援要請を受け、マクリ政権の支持率は低迷する。こうした中、フェルナンデス氏はマクリ氏の改革路線が経済低迷の原因だと主張し、政権批判の受け皿として存在感を増していた。19年10月に予定される次期大統領選では有力対抗馬と目されていたが、捜査の行方次第では支持を失う可能性も出てきた。