オリックス、アルバースと2年契約 ジンクス破るか
今年のプロ野球は新外国人投手の当たり年だ。ロッテのボルシンガー、中日のガルシアがすでに2けた勝利を挙げ、日本ハムのマルティネスも10勝投手の仲間入りをしそうな気配だ。
オリックスの先発左腕アルバースは10勝目を目前にして腰痛に見舞われ、18日に1軍登録を抹消された。しかし、球団は回復、再起を確信し、新たに来季からの2年契約を結んだ。まじめな32歳への期待のほどがうかがえる。
来日当初の評判は芳しくなかった。多彩な変化球を駆使し、制球もいいが、球威不足に不安を抱かれた。だが、実戦になると評価が一変した。内外角、高低いっぱいに球を散らし、打者を幻惑した。ストライク勝負を強行する外国人には珍しく「ボールの使い方がうまい」と、首脳陣の見方も変わった。5月から6月にかけて7連勝。一時は最多勝争いのトップに立った。
若い若月健矢捕手のリードを持ち上げながらも、自身は闘争的な姿勢を保ち続けた。「技巧派」に分類されるのを好まず、「勝負事はなんでも勝たぬと気が済まぬ。親類の幼い子供らとのカード遊びでも」と笑った。
ところが、6月26日に9勝目をマークしたあと、すっかり勝ち星から見放された。打線に故障者が続出し、援護が得られなくなった。好調だった救援陣にも疲れが出て、先発陣の白星を消す試合が増えた。そもそもアルバースの投球を見た限り、この間に腰にかすかな違和感を覚えていたように見えた。
故障を承知した、新たな2年契約に問題はないのか。オリックスの元球団代表の井箟重慶さんは、在任中から選手の複数年契約に反対していた。
アルバースのケースを特定したわけではないが、「複数年契約だと、どうしても1年目は緩む。意識するかどうかは別にして、契約切れの年に頑張ればいい、ということになる」。
それを防ぐ対策は、高いインセンティブ(出来高払い)を設定するか、もう一人の外国人を獲得し、競争相手としてぶつけることだ。球団経営にとって、余計な問題が派生する。これはなにも、外国人に限ったことではなく、フリーエージェント(FA)の日本人選手の契約でも同じことだ。
今季のオリックスはBクラスに沈んだまま、なかなかはい上がれない。投手陣の両輪、金子千尋、西勇輝の調子が上がらないので、チームに勢いがつかない。これで来季のアルバースが複数年契約1年目症状に陥ると、救いようがない。そうならないことを願うばかりだ。
(スポーツライター 浜田昭八)