米、対中関税第2弾発動 中国はWTO提訴へ
【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権は23日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税の第2弾を発動した。半導体など中国からの輸入品160億ドル(約1兆8千億円)分に25%の関税を上乗せする。中国も同規模の報復関税を課す。両国は貿易問題の事務レベル協議を始めたが、中国の補助金政策などを巡って溝は深い。世界の二大経済大国が互いに関税をかけ合う貿易戦争は泥沼化している。
米国側は米東部時間23日午前0時1分(日本時間午後1時1分)以降に通関した製品から関税を徴収する。中国も同時刻に米国からの輸入品に関税をかける。
米国が関税を課す対象は集積回路やメモリーなどの半導体、製造装置のほか、家電や産業機械に幅広く使われるプラスチックやゴムといった化学素材など計279品目。中国側は古紙や自動車、銅、アルミニウムのくずなど計160億ドル分、333品目に25%の追加関税をかける。関税で中間財のコストが上がれば米中をまたぐ企業のサプライチェーン(供給網)に影響が広がりそうだ。
中国商務省は23日の声明で「米国の追加関税は明らかに世界貿易機関(WTO)の規則に違反している疑いがある」と批判し、「必要な反撃を取り続けざるを得ない」と表明。今回の件をWTOに訴える方針を示した。
米国は7月6日、産業用ロボットなど340億ドル分に25%の関税を発動した。第2弾と合わせると計500億ドルに上り、中国からの年間輸入額の1割に相当する。中国側も同規模の報復措置をかけており、関税の応酬が一段と激しくなる。
米中は22日から、6月上旬以来の公式対話となる次官級協議をワシントンで始めた。マルパス米財務次官(国際問題担当)と王受文商務次官が23日まで貿易問題や人民元相場を議論する。両政府には11月の首脳会談開催をにらみ対話による解決を探る動きがある。
ただトランプ大統領は長期戦も辞さない構え。双方に強硬論も根強く、事態の打開につながるかは不透明で、対立は一段と深まる恐れがある。米政権は中国が報復措置に出れば2千億ドル分に関税を課す方針を表明済みだ。約6千品目にわたる対象品目の原案を公表しており、9月上旬までに産業界の意見を募った後で発動手続きに入る。第3弾にはかばんや帽子などの服飾品や家電、果物や野菜といった食料品など消費財を多く含む。
中国は液化天然ガス(LNG)など計600億ドル分の報復リストを公表済み。第3弾を実際に発動すれば世界経済への影響は本格的に広がる。
米政権は3月、500億ドル分の中国製品に制裁関税を課すと表明。5月から6月に貿易協議を開いたが、米国側が求める中国のハイテク産業振興策「中国製造2025」の撤回や知財対策で溝は埋まらなかった。
ドナルド・トランプ元アメリカ大統領に関する最新ニュースを紹介します。11月の米大統領選挙で共和党の候補者として、バイデン大統領と再び対決します。「もしトラ」の世界はどうなるのか、など解説します。