東京5区、4段階で避難呼びかけ 荒川など氾濫に備え
東京都東部の江戸川区や足立区など5区は22日、集中豪雨で区内を流れる荒川と江戸川が氾濫した場合の広域避難計画をまとめた。1000年に1度の確率の豪雨があった場合、「5区のほとんどが浸水する」と強調し、危険度に応じて4段階で避難や準備を呼びかける基準を策定した。
墨田、江東、葛飾の各区を加えた5区の協議会が計画を公表した。3日間の総雨量が荒川の周辺で632ミリメートル、江戸川の周辺で491ミリメートルという未曽有の集中豪雨を想定。5区の総人口約260万人の9割以上が住む地域が50センチメートル以上浸水すると予測した。足立区の北千住駅の周辺をはじめ人口の1割が居住するエリアは2階が浸水する可能性がある。
国は自治体へ災害発生までの避難などの行動計画を時系列的に「タイムライン」としてあらかじめ定めておくよう求めている。5区協議会には国の関係機関も参加しており、従来のタイムラインも参考に広域避難計画を合同で策定した。
計画ではまず、台風などで72時間後に河川の氾濫の恐れがある場合に、5区が「共同検討」を始める。防災行政無線や報道機関などを通じて、避難の準備を呼びかける。
台風の進路が東京をそれず、48時間後に猛烈な台風が接近する可能性がある場合は、5区外の安全な場所へ自主的に避難するよう呼びかけに入る。荒川流域の平均雨量が3日間累積で500ミリメートルを超える可能性があると予測された際にも自主避難を促す。
接近が24時間後に迫ったら、もう一段高い段階の「広域避難勧告」を発令する。「ただちに域外へ退去して下さい」と告知の口調も厳しくなり、高齢者や障害者、乳幼児ら配慮が必要な人の介助を除き自動車での避難は避けてもらう。
自治体が広域避難をする時間的な余裕がないと判断した最悪の場合、氾濫の9時間前には「垂直避難」を指示する。自宅のより高い階の部屋や最寄りの高い施設への避難のことで、人によっては消防や自衛隊の救助対象となる。
被害想定では、最悪の場合に合計100万人が住む地域で2週間以上水が引かない可能性を指摘した。避難計画では、垂直避難で浸水を避けることができても、「電気、ガス、水道が使えない生活に耐えなければならない」と強調。5区外の親戚や知人、勤務先といった避難先の事前確保も呼びかけた。
協議会座長の多田正見江戸川区長は「計画は基本的な枠組み。今後、安全に避難地に向かえる条件を用意していく」と述べた。計画策定に協力した東京大学の片田敏孝特任教授(災害社会工学)は「最近は1回の雨量が膨大。各区が(個別で)対応する防災ではなく広域防災が必要」と強調した。