英ディープマインド、AIで目の疾患検出 熟練医並み
【シリコンバレー=中西豊紀】米グーグルの持ち株会社アルファベット傘下の英ディープマインドは13日、目の疾患を熟練の専門医師と同程度のレベルで検出できる人工知能(AI)システムを開発したと発表した。同社は2016年に世界トップ棋士を破った囲碁AI「アルファ碁」を開発したことで知られるが、医療の分野でもAIが存在感を発揮し始めた。
米医学誌のネイチャーメディシンを通じて発表した。50以上の目の疾患を対象としたところ、世界トップレベルの眼科医と比べて94%の精度で治療の緊急性を患者に提案できたという。網膜の一部に異常な血管ができてしまう加齢黄斑変性や、糖尿病性黄斑浮腫が対象だ。
目の疾患は治療が遅れると失明につながる場合がある。専門医による画像分析を経ての診断は、作業が煩雑で間に合わない場合があった。ディープマインドのAIにより「早期治療が必要な患者を発見しやすくなる」としている。
研究は英国民保険サービス(NHS)などと16年に開始。過去に撮影され匿名処理を施した数千の目のスキャン画像を学習することでAI診断の精度を高めた。光干渉断層検査(OCT)スキャンの画像データから10種類の目の疾患の特徴を見分けるだけの能力を持つ。
「判断の妥当性」にも配慮し、AIがどういった経緯で診断を下したかも説明できるようにしている。ディープマインドなどは今後、臨床試験の実施を進め実際の医療現場での活用に向けた認可の取得を目指す。実現すればディープマインドとして初の医療向けAIシステムとなる。
大量の画像やデータから短期間に法則性や誤差を見つけるのはAIが得意とする作業だ。今回のAIはこれまで医師の経験と勘に頼ってきた作業を大幅に軽減する可能性を秘めている。囲碁打ちから高度な医療行為まで、人間の専門分野と思われてきた作業をAIが手掛ける時代が始まっている。