豪干ばつで飼料急騰 異常気象、牛肉価格影響も
【シドニー=松本史】世界で相次ぐ猛暑や洪水などの異常気象がオーストラリア産農産物にも影響を及ぼす恐れが出てきた。豪東部ニューサウスウェールズ(NSW)州などで干ばつが深刻化し、畜産業を中心に農家への被害が深刻化している。飼料用干し草価格は半年で2.6倍に上昇。日本の輸入牛肉市場でシェア約5割を占める豪州産牛肉の値上がり要因になるリスクもはらむ。
豪州では年初からNSW州などで乾燥が続き、豪気象庁によると7月は全国の降水量が2002年以来の少なさとなった。このため、家畜用飼料の干し草の需給が逼迫。価格は最大で1トン当たり400豪ドル(約3万2800円)となり、150豪ドルだった半年前から跳ね上がった。
豪州の牛と羊の多くは牧草で飼育され、麦などの茎から作る干し草は栄養補助に使われるほか、干ばつ時の代替飼料となる。豪飼料産業協会のジョン・マッキュー最高経営責任者(CEO)は「今後も干ばつが続けば供給はさらに細り、価格は上がるだろう」と話す。
オランダ金融機関のラボバンクで食肉などを担当するシニアアナリスト、アンガス・ギドリー・ベアード氏は「農家は干ばつで飼育できなくなった牛を早い段階で出荷するようになっており、足元では価格が下落している」と指摘。早期出荷は長期的には供給減少につながり、国内価格の上昇が起きると予測する。
当面は米中貿易戦争による追加関税で中国市場で売れなくなった米国産牛肉が中国以外の市場に出回るため、豪州も輸出価格を上げにくい事情がある。ただ、干ばつが長引けば農家の経営を圧迫し、国際市場でも豪州産牛肉価格を押し上げる原因となる恐れがある。
日本の豪州産牛肉の関税は現在、冷蔵肉で29.3%。環太平洋経済連携協定(TPP)が発効すれば、段階的に下がり、発効16年目で9%になり、輸入の大幅な拡大が見込まれる。日本向けの豪州産牛肉は、穀物を餌とする牛が重量ベースで約半分を占める。