中国株の時価総額急減 貿易摩擦で日本下回る
米中貿易摩擦が重荷となり、中国株が下げ止まらない。景気の減速懸念も中国株の下落に拍車をかけている。一方、摩擦の影響が中国より小さい日本株は底堅く推移。一時は日本株を大きく上回った中国株の時価総額は日本株を下回り、両者の差は1兆ドル(111兆円)に開いた。貿易摩擦問題は短期間で収束しないとの見方が多く、投資家はその影響度合いで投資先を選別し始めた。
3日の東京株式市場では日経平均株価が前日比で小幅高となる一方、中国株式市場では上海総合指数が1%下げて7月5日以来およそ1カ月ぶりの安値をつけた。QUICK・ファクトセットのデータによると、上場企業の評価額である時価総額の合計は日本株市場が6.2兆ドル(690兆円)。一方、中国株市場(上海・深圳合計)は5.2兆ドルと約2年ぶりの小ささになった。日本株の時価総額の順位は米国株に次ぐ世界第2位だ。
中国株が日本株の時価総額を初めて抜いたのは2015年3月。当時は中国の個人の間で投資ブームが過熱し、ピーク時には中国株の時価総額は日本株の1.7倍に膨らんだ。だが15年8月に人民元切り下げによる「チャイナ・ショック」で中国株は急落。16年以降はおおむね中国株の時価総額が日本株をやや上回る状態で推移してきた。
18年3月にトランプ米大統領が鉄鋼・アルミニウムの輸入を制限する方針を表明したのを機に中国株は大きく下落。日本株は堅調な企業業績が相場を支えている。両市場の時価総額は1~3月はほぼ同水準で並んでいたが、中国株が縮小する形で両者の差が開いた。
日中の時価総額逆転の背景には貿易摩擦の影響度の違いがある。中国ではすでに「景況感指数などに貿易摩擦の悪影響が表れ始めている」(第一生命経済研究所の西浜徹氏)。輸出企業の受注が減少しているのに加え、人民元安が輸入企業のコストを押し上げている。一方、日本企業については受注減少などの直接的な影響は現時点ではまだほとんど出ていない。
中国では通信機器大手の中興通訊(ZTE)は米国企業との取引禁止措置を受け4月から株取引を2カ月間停止した。6月の再開後は深圳市場で値幅制限いっぱいの下落が続き、停止前の4割強の水準まで下落した。
電気自動車(EV)・電池大手の比亜迪(BYD)は、習近平(シー・ジンピン)政権が産業高度化を目指して策定した「中国製造2025」戦略の中心的存在だ。米国から今後干渉を受ける可能性は否定できず、株価の下げが加速している。1日には米商務省が軍需関連44社を輸出管理規制の対象に指定。中国船舶重工や北方導航控制技術などが大きく売られた。
習政権は企業や地方政府が抱える債務の圧縮を進めてきた。インフラ投資の伸びが鈍り、景気が減速する懸念も強まっている。鋼材市況は足元堅調だが、宝山鋼鉄など景気敏感株は低迷。中国共産党は7月末に開いた政治局会議で積極的な財政政策で景気を下支えする方針を決めたが「具体的な数字がみえてくるまでは株を買いにくいという個人投資家が多い」(中国の地場証券)という。
日本株も先行きは楽観できない。15年のチャイナ・ショックの際は日本企業の需要も減少した。今回も貿易摩擦の激化で中国景気が減速すれば、日本企業も影響を免れない。「中国株が下げ止まらない限り、日本株への悪影響も避けられない」(三井住友アセットマネジメントの平川康彦氏)との声も出ている。(松本裕子、張勇祥)