池田泉州HD「コスト削減で体質改善」 鵜川社長
有価証券頼み脱却、本業立て直しへ
池田泉州ホールディングス(HD)が、鵜川淳社長(池田泉州銀行頭取も兼務)の下で新スタートを切った。長引く低金利で落ち込む貸し出しなど本業の収益を、外債に偏った有価証券運用で補う同行の構造転換に着手。今後3年でコスト削減を進め、地場の大阪府で勢いが増す訪日外国人関連ビジネスの資金需要も取りこむ。本業立て直しの道筋を鵜川社長に聞いた。
――過去10年に有価証券運用で多額の損失計上を繰り返しています。
「リーマン・ショック後に旧池田銀行が出した有価証券の損失は、2018年3月期(国債等債券損益で137億円の損失を計上)と比較にならないほど多い。リスクの取り過ぎが問題だった。その後に旧泉州銀行と合併して資本金や企業規模は2倍となったが、今は自前のルールに基づいてかなり保守的な運用をしている」
「ここ数年は低下した円金利の上昇を恐れて日本国債の保有量を減らす一方、米国債で本業の利益を補っていた。だが、日本の低金利が進んだほか、米トランプ政権発足後に米金利が想定外に上昇するなど判断が裏目に出た。今回は外債に偏ったいびつなポートフォリオが反省点だが、相関関係を意識して保有していた株式は値上がりした。同じことを繰り返したといわれるのはつらい。ただ、今後は有価証券の運用自体を減らしていく」
――有価証券運用を絞って余ったお金をどこに振り向けますか。
「(外債など)リスクがあるものには手を出さない。日本国債についても償還を迎えた分は買うかもしれないが、増やすつもりはない」
「一方、関西では訪日外国人関連ビジネスの追い風が吹いており有望な分野だ。人手不足に悩む企業が多い中、当行は外国人や留学生を含む人材紹介や雇用のサポートを積極的にしてきた。リスクを見極めつつ融資にも力を入れたい。そのためにも今後はリスク対応力とコスト耐久力が重要となる」
――池田泉州HDの発足から9年。足元では本業の稼ぐ力が落ち、経費率の高さも目立ちます。
「合併から5年はシナジー効果が生まれて一定水準の利益が出ていた。その後は金利の低下で貸し出しを中心とする本業の利益が減少する中、有価証券の運用でカバーするのではなく本業で巻き返す視点が足りなかったと思う。もう少し早くコスト削減に着手して、本業で利益を生み出せる体制にしておくべきだった」
「今後3年でエリアごとに店舗の機能を大幅に見直すほか、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)なども活用して業務を効率化。コストを削減する一方で、余剰人員は配置転換して営業部隊を強化する。本業で一定の利益を計上できる企業体質を構築したい。現状89%の経費率は3年で85%、早期に80%を切るよう努力する」
――金融とIT(情報技術)を融合するフィンテックを研究・開発する「フィンクロス・デジタル」を他の地銀6行と共同出資で設立しました。
「この分野の投資に地銀単独で取り組むのはコスト面で難しい。同じ気持ちを持つ地銀が基幹システムの系列を超えて集まったことで取れる選択肢も広がる。営業や業務の効率化でフィンテックを活用していく。将来的にはAIで口座の入出金を分析するなどして、(優良企業に比べ金利が高い)ミドルリスク層向けに融資するなど、本業の強化にもつなげたい」
「金融機関にも様々なビジネスモデルがあるが、顧客のニーズは確実に変化していく。対面型の営業と同様に、非対面のチャネルも重要だ。そうした中でフィンテックへの対応が遅れれば、収益機会を狭めることになるだろう」(中谷庄吾)