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諫早訴訟で国側勝訴 開門命令、事実上無効に 福岡高裁

(更新)
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国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門を命じた確定判決に対し、国が開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟の控訴審判決が30日、福岡高裁であった。西井和徒裁判長は国側の主張を認め、開門しない国に制裁金を支払わせる強制執行について「許されない」との判断を示した。開門を命じた2010年の確定判決の効力を事実上無効にするもので、国側勝訴となる。

国はこれまで、10年の確定判決と、開門差し止めを命じた13年の仮処分決定という相反する司法判断の間で板挟みになっていた。今回の判決は、開門命令に国を従わせるための制裁金を通じた執行力を無効にする内容で、確定すれば司法判断の「ねじれ」は解消する。開門を求めてきた漁業者には打撃だ。これまでに国が支払った制裁金は約12億円。

漁業者側は上告する構えで、結論は最高裁に持ち越される。下級審でも開門を求める別の訴訟などが続いており、開門を巡って漁業者と営農者の意見が対立する膠着状態の打開のメドはたっていない。

国は今回の裁判で、確定判決時とは「事情が変わった」と訴え、開門しないことの正当性を主張。▽漁業者の共同漁業権は既に消滅した▽13年の長崎地裁決定で開門禁止義務を負った――などとしていた。

西井裁判長は判決理由で「漁業法は共同漁業権の存続期間を10年と定めている」と指摘。漁業者らの共同漁業権の免許期限は13年8月で、その後に新たな免許が下りたものの「13年8月に免許が切れた漁業権とは別だ」と判断した。漁業者側は「漁業権は再取得したため権利は続いている」と反論したが、認められなかった。

確定判決時の漁業権が消滅していたことになり、開門請求の前提となる漁業権がない以上、「開門請求はできない」と判断。国側の請求を退けた一審・佐賀地裁判決を取り消して国側逆転勝訴を言い渡した。

漁業者側の弁護団は判決後に記者会見し、馬奈木昭雄弁護団長は「極めて不当な判決。当然に覆されるべきだ」として上告する方針を示した。

共同漁業権が13年8月で消滅していたとの判断を巡り、馬奈木団長は「その権利に基づいて裁判所が判決を出してきた。これまで何をしてきたのか」と批判。別の弁護士も「他の論点に触れず、門前払いで判断を放棄した」と述べた。

馬奈木団長は「国の主張を丸のみしている。有明海の再生、解決の道がどんどん遠のいていく」と怒りをあらわにした。

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