貿易戦争、米企業に打撃 GMやGEの利益圧迫
【ニューヨーク=宮本岳則、シリコンバレー=白石武志】米国が仕掛けた貿易戦争が、目に見える形で米企業の業績に悪影響を及ぼし始めた。自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)や家電大手のワールプールが相次ぎ業績予想を下方修正。金融界からも企業の投資意欲や個人消費の萎縮を懸念する声があがる。米経済は足元で好調を持続している。だが企業業績への打撃が広がれば、投資や消費の減退を通じ実体経済に影を落とすことになる。
GMは25日、2018年4~6月期の決算を発表した。自動車事業のもうけを示す部門営業利益は11億4200万ドル(約1200億円)と、前年同期からほぼ半減した。鉄など原材料費が約3億ドル上昇したのが響いた。
トランプ米大統領は3月、鉄鋼などの輸入制限を発動し追加関税を課した。「原材料費の圧力は想定よりはるかに大きい」(メアリー・バーラ最高経営責任者=CEO)と、18年通期の業績予想を下方修正した。米国はさらに自動車への追加関税を検討中。米業界団体は輸入コストが1台平均で64万円増え数十万人の失業を招くと危惧する。
影響は自動車以外にも広がる。23日に業績予想の下方修正を発表したのは、保護主義政策の恩恵を大きく受けるといわれていたワールプールだ。
米国は2月、韓国など海外勢の不当廉売を理由に洗濯機の輸入制限を発動した。ライバルは発動前に在庫を積み増し販売で攻勢。さらに鉄など原材料価格が高騰し、業績が悪化した。株価は約5年ぶりの安値に沈んだ。米ゼネラル・エレクトリック(GE)も対中関税の発動で中国からの輸入コストなど最大4億ドルの負担増を見込むと表明した。
今後、注視されるのが実体経済への影響だ。
米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは「(企業や消費者の)心理面に影響する」と指摘。コカ・コーラは25日、缶に使う鋼材価格の上昇を受け卸売価格を引き上げたと表明した。家計を圧迫する材料が増えるなか、米ミシガン大が算出する7月の消費者態度指数は前月から約1ポイント下落。消費者心理が悪化しつつあることを示した。
米企業全体の業績は4~6月期に2割増益が見込まれ、足元で好調を持続している。だが貿易戦争が深刻になれば、米経済の屋台骨である個人消費や企業の投資が縮む。実体経済を揺るがすリスクの芽は、着実に育っている。
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