ラグビー神鋼にカーター入団 NZ流にチーム導く
スポーツ界で今、最も熱い土地といえば神戸だろう。サッカーJ1の神戸に加入した世界的名手、アンドレス・イニエスタが7月22日に日本デビュー。そのイニエスタに劣らぬ名声を誇る大物が、時を同じくしてラグビー・トップリーグの神戸製鋼に入団した。ニュージーランド出身のダン・カーターだ。
同月16日、神戸市内での入団記者会見に同席した福本正幸チームディレクターの高揚ぶりがすべてを物語っていた。「まさか一緒にプレーしてくれるとは思っていなかった。隣に座って会見しているのが信じられない」
SOとCTBをこなすカーターを名手たらしめる要素は枚挙にいとまがない。パスの正確さは言うに及ばず、相手選手にタックルされた状態で放るオフロードパスでは左側の選手に左手だけで投げる妙技もしばしば。快足を生かしたランも一級品で、走りながらわずかな重心移動やパスダミーで相手選手を翻弄し、走路をこじ開ける動きは秀逸。左足からのキックは針の穴を通す精度と飛距離を誇る。
世界最高峰リーグ、スーパーラグビーのクルセーダーズやニュージーランド代表の主力として長く活躍してきた。国の代表同士が対戦するテストマッチで実に1598得点を挙げ、ワールドカップ(W杯)でのニュージーランド2連覇に貢献した2015年を含め、世界最優秀選手に3度輝いている。
ニュージーランドやオーストラリアなどの強国の主力が日本のチームに加わることは、もはや珍しいことではなくなった。ただ、カーターほどの大物が来ると予想した人はそう多くなかったはず。本人は日本に来た理由をこう述べた。「これまで16シーズン、プレーしてきたが、これだけ長くやると新しいモチベーションが必要になる」。15年限りで祖国を離れ、昨季までフランスのラシン92で活躍した36歳は「もう一つプレーしたい国が日本だった」と話した。
神戸製鋼は今季、ニュージーランド代表コーチなどを務めた知将、ウェイン・スミス氏を総監督に迎えた。ラグビー最強国のダイナミックな展開攻撃を取り入れようとしている中、その国で長年、司令塔を務めたカーターの加入は何より心強く、「今季目指すニュージーランドラグビーをより具現できる体制が整った」と福本チームディレクター。8月31日のトップリーグ開幕が今から待ち遠しい。
カーターは、長きにわたる現役生活を「神戸で終わらせようと思っている」とまで語った。その覚悟から本気度の高さがうかがえる。
(合六謙二)