起業家集う「五反田バレー」 6社が交流団体
東京・五反田がスタートアップ企業で活気づいている。渋谷や六本木に比べ家賃が手ごろで交通の便もよく、企業が集積。25日には五反田のスタートアップの交流団体「五反田バレー」が発足し、地域の連携強化に動き始めた。大阪でも西中島を中心に「にしなかバレー」が形成されるなど、東西で起業の町づくりが進んでいる。
交流団体はクラウド会計ソフトのフリー(東京・品川)や営業支援システムのマツリカ(同)など、五反田に本社を構える6社が設立した。近隣の企業に参加を呼びかけており、勉強会などを通じて企業同士のつながりを深めるほか、オープンイノベーションに関心のある大企業や金融機関とも連携する。
代表理事に就任した黒佐英司氏(マツリカ代表取締役)は、「スタートアップといえば五反田というブランドをつくりたい」と設立の狙いを説明する。設立メンバーであるセーフィーの佐渡島隆平社長も「かつて五反田に本社を構えたソニーのように、町を代表する企業を生み出せれば」と意欲を示す。
25日には品川区と協定を結び、イベントの企画や中学生向けの起業家教育などで協力することで合意した。浜野健区長は「こんな支援が必要だとヒントを教えてほしい」と呼びかけた。
オフィス移転支援のヒトカラメディア(東京・渋谷)によると、2~3年前から五反田に移転するスタートアップ企業が増えているという。五反田にはトレタの中村仁社長(パナソニック出身)、ココナラの南章行社長(三井住友銀行出身)など大企業で勤務経験のある起業家も多く集まっている。
渋谷や六本木のような華やかさはないが、雑多な街の雰囲気に加え、家賃の安さや交通の便の良さが評価されている。不動産サービスのCBRE(同・千代田)の調査では、五反田を含む大崎地域のオフィス賃料は、IT企業などが集まる渋谷・恵比寿地域に比べて約2割安い。
システム開発の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は五反田にオープンイノベーションの推進拠点を2017年秋に構えるなど、大手企業も着目し始めた。CTCはこれまで100回以上イベントを開き、外部企業との交流を深めている。
一方、関西でも起業の町づくりが進む。大阪市でスタートアップが多いのが淀川区の西中島地区「にしなかバレー」だ。交通の便が良く、JR新大阪駅が徒歩圏にある。梅田駅など大阪中心部にも近い。交通の利便性に加え、梅田駅など大阪の中心部より3~4割安い賃料でオフィスを借りられるのも魅力だ。
西中島地区の起業家でつくる団体「にしなかバレー」には現在、約35社が所属する。共用オフィスを開いたり、定期的に会員同士が交流を深め合う勉強会も開催したりしている。参加企業は当初を上回るペースで増えたことから、今後は西中島から新規株式公開(IPO)企業を輩出していくことが目標だ。
(若杉朋子、川上梓、黒田弁慶)
[日経産業新聞 2018年7月26日付]
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