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球磨川の清流、再び我が手に 全国初、挑んだダム撤去

九州・沖縄 平成の記憶

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熊本の山あいを縫う球磨川の渓流が、エメラルドグリーンに輝くみなもに木々と陽光を映し出す。右に左にうねる急流が岩にはじけ、勢いよくしぶきを上げた。夏真っ盛り、名物のアユで船ははち切れんばかりだ。

「ダムがあったときはしょうゆを垂らしたような濃い茶色の水。夏場はどぶのように臭った」と、熊本県八代市坂本町の住民自治協議会の元会長、森下政孝さん(77)。「子供の頃は本当にきれいな川だった。ウナギをたくさん捕って小遣いにした。今はそんな昔の川に戻りつつある」

清流がよみがえったのは、県営荒瀬ダムが撤去されたためだ。戦後の電力需要に応え、1955年に完成した貯水容量約1千万立方メートルのダムは、半世紀にわたり2万世帯分の電力を九州電力に供給してきた。

一方でダムの稼働は周辺住民の平穏な日常を脅かした。「家が揺れて眠れない。一度泊まってみてください」。川沿いに住んでいた山下みどりさん(75)は振動や浸水被害に悩まされ続けた。窮状を訴えても県の担当者は口をつぐむだけ。結局、自ら高台に引っ越すしかなかった。流れはよどみ、汚濁もひどかった。

政治の荒波が翻弄

九州他地域での発電が増えてきたこともあり、旧坂本村議会は2002年(平成14年)9月にダム継続反対の意見書を可決。同12月には当時の潮谷義子知事が全国初のダム撤去方針を表明した。

ところが政治の荒波がダムを翻弄する。次の蒲島郁夫知事は08年、前知事の方針を翻し存続を宣言。撤去費が当初試算の約60億円から100億円近くに膨張していた。「財政難なのに使えるダムを巨費で壊すなんて」(熊本県)というわけだ。

存続するかにみえたダムの運命をさらに一転させたのが、翌年の政権交代だった。09年衆院選で民主党政権が誕生すると、当時の前原誠司国土交通相が10年1月、ダム継続に必要な水利権について「地元漁協の同意がなければ同年3月で失効する」と表明。漁協はダム撤去を訴えて同意を拒み、知事も水利権更新を断念せざるを得なかった。

最終的に国の財政支援も決まり、12年に日本初のダム解体がスタート。工事は5年余をかけ今年3月、ついに完了した。

若者が町おこしに挑む

効果はてきめんだ。県の環境モニタリング調査では、水流の回復でアユやハゼなどの魚類や、カゲロウなどの水生昆虫が増加。アオコが浮き環境基準を満たさなかった水質も改善した。流域住民も「今の川なら泳ごうかなって気になる」。

清流をテコに若者が町おこしに乗り出す動きも。大学院でダム撤去に伴う環境変化を研究していた溝口隼平さん(36)は「現場を見たい」と地元に移住。リバーガイドとしてラフティングを観光の呼び水にと奔走する。

人口3600人余の坂本町で65歳以上の人は5割を超す。1尺(約30センチ)もの体長で知られる球磨川の「尺アユ」も、ピーク時年5千万匹というかつての漁獲にはほど遠い。高齢化と過疎化の中、地域振興のハードルは高い。それでも「川の恵みを経済力に変え、サステナブル(持続可能)な地域に」(溝口さん)と、関係者の鼻息は荒い。

ダム撤去という全国初の大仕事の次は、平成の先を見据えた地域再生への挑戦。清流が運んできた活力に、全国から関心が集まる。(江里直哉)

専門家「地域の財産生かし『ダム後』の価値を」


 公共事業推進の行政と、反対派の対立の膠着――。そんな構図で語られがちなダム事業。だが荒瀬ダムが解体にまで至ったことを、大本照憲熊本大教授(河川工学)は「ただ壊すだけでなく『自然に戻す』という目線があった点が奏功した」と指摘する。
 京都大防災研究所の角哲也教授は「ダムの役割と撤去の経済的合理性が綿密に議論され、住民に選択肢として示されることが重要だ」と話す。荒瀬ダムもこの点は不十分だったという。
 荒瀬ダムは「脱ダム」を加速するのか。角教授は「単純な解体を目指すのではなく、球磨川のアユのような地域の財産との兼ね合いをしっかり考え、『ダム後』の新たな価値を生み出す議論を進めるべきだ」と訴える。

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