「WTOは深刻な危機」独シンクタンクが報告書
貿易摩擦が強まり世界貿易機関(WTO)は深刻な危機にさらされている――。ドイツの有力シンクタンクのベルテルスマン財団は、WTOの信頼性が低下しているとする報告書をまとめた。保護主義を強める米国などの動きにより「ルールに基づく貿易という理想が揺らいでいる」と指摘。多国間の政策協議を通じたルールの策定が重要だと強調した。
同財団は報告書で、米国が安全保障を理由に追加関税を課していることについて「貿易をゆがめる政策の連鎖を招き、危機を生み出す」と懸念を示した。中国などの新興国に対し「多国間貿易の価値を自覚することが欠かせない」と強調した。
WTOはモノやサービスの貿易自由化の推進を目指し1995年に発足した。現在164カ国・地域が加盟し自由化の協議を続けているが、全会一致を原則とするためルール作りは難航している。報告書ではWTOでの交渉が進展しないことから、自由貿易協定(FTA)など特定の相手国を優遇する特恵貿易協定(PTA)が2000年代以降に約400件結ばれたと指摘。「WTOの運営で指導的な立場にいた米国だけでなく、多くの国が不満を感じている」とした。
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