NTT東の井上社長「エッジコンピューティングに期待」
NTT東日本の井上福造社長は、2018年7月17日までに日経 xTECHの取材に応じ、「少なくとも在任中に増収に転換したい」との意欲を示した。主力の光回線(フレッツ光)の契約数は2020年3月期までに1200万件の突破を目指す。フレッツ光の10Gビット/秒への高速化については検討中とした。
NTT東日本の業績は営業利益が6期連続の増益のうえ、過去最高益を4期連続で更新中と利益面では好調だが、売上高は7期連続の減収である。音声系の収入減をIP系の収入増でカバーできない苦しい状況が続いている。ただ、井上社長は増収に向け、手応えを感じている。「付加価値サービスが年間100億円規模で拡大しており、この勢いで積み上げていけば音声系の収入減をカバーできる」とした。
増収に向けて力を入れるのは、映像IoT(インターネット・オブ・シングズ)だ。映像は大容量のトラフィックが発生するので光回線が不可欠。無線LAN対応のカメラを店舗や工場などに配置し、様々なソリューションを提案している。2018年6月にはベンチャー企業と組み、小売店向けの万引き防止サービス「AIガードマン」の提供を始めた。工場のライン監視や農作物の盗難防止など応用範囲は広く、「IoTの価値を顧客にいったん認めてもらえれば他のセンサー監視などでプラスアルファの受注拡大を見込める」(井上社長)。
今後の期待分野としては、モノに近いデバイス側でデータを分散処理するエッジコンピューティングを挙げた。クラウドにおける処理のオフロードだけでなく、顔認証と連動した人物の自動追尾や機械の遠隔操作などリアルタイム処理が求められる用途でニーズは高いとみている。NTT東日本は東日本エリアに約2000の通信ビル(局舎)を持ち、エッジコンピューティングのサーバーを配備する用途を積極的に提案していく考えだ。2018年6月にはパートナー企業との共同実証環境「スマートイノベーションラボ」も用意した。
競合他社が展開する10Gビット/秒のサービスについては検討中とした。「法人向けはニーズが増えてきたので提供する予定だが、どうメニュー化するかは決めていない。スマートイノベーションラボでも検証していく」(同)。一方、個人向けは切迫したニーズがあるわけではなく、普通の使い方であればまだ1Gビット/秒で十分との認識だ。ただ、「いつでも提供できるように準備を進めている」(同)とした。
(日経 xTECH/榊原康)
[日経 xTECH 2018年7月17日掲載]
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