公取委、iPhoneの高い通信料を問題視
アップル自主是正
公正取引委員会は11日、米アップルと携帯電話大手3社が結ぶiPhone販売の契約が独占禁止法に抵触する恐れがあり、アップルから契約を一部改定すると申し出があったと発表した。公取委は端末代を割り引くよう義務づける契約が、携帯大手の事業を拘束すると指摘。通信料が割高なプラン以外に選択肢がない状態を作っているとしていた。
公取委が問題視したのはアップルがNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社と結ぶ「iPhoneアグリーメント」と呼ばれる契約。アップルはiPhoneを利用者が手ごろに買える負担額まで下げるため、本来、携帯大手が毎月の通信料の引き下げに充てられるはずの原資を、端末の割り引きに充てるように義務づけていた。
独禁法は取引相手のビジネスを不当に縛る行為を「拘束条件付き取引」として禁じている。公取委はこの契約が壁になり、3社が月々の通信料が安いプランを消費者に提供できない状態が続いたことが問題だとした。
アップルは今回、この形以外のプランも認め、端末代金と通信料を分離してiPhoneでも通信料が安いプランを設定できるように契約見直しに応じた。公取委はアップルが自主的に是正したため違反を認定せず、2016年10月から続けた調査を終了した。
公取委はアップルが課した「販売ノルマ」や、iPhoneの下取りに関するルールなども調査した。ただノルマが未達でも罰がなかったことや、下取り端末の流通を制限していなかったことなどから独禁法違反には当たらないと判断した。
大手3社とアップルの契約は長年、業界内で「不平等条約」と言われてきた。アップルの力は極めて強く「かつては料金プランまでアップルにお伺いを立てていた」(ある携帯大手)。
iPhone取り扱いによる契約者獲得と引き換えに各社は安値による大量販売を余儀なくされた。その結果、日本はiPhoneの出荷台数シェアが5割を超える珍しい市場になった。海外はカナダなど一部を除き、せいぜい2割程度だ。
日本の通信料は近年下がりつつあるが、負担はなお重い。カナダの民間調査機関の17年の調査によると、通話無制限で5ギガ(ギガは10億)バイトのデータ通信をした際のコストは日本は約6000円。主要7カ国(G7)で最も安い英国と比べると約1.9倍の水準だ。
公取委は6月にまとめた報告書でも、スマホの端末代と通信料の「セット販売」を見直すよう携帯各社に求めていた。アップルの自主的な是正により、携帯大手は人気機種のiPhoneで、例えば、端末代金は今より高いが月々の通信料は安くなるといった料金プランを決めることができるようになる。
08年7月11日に日本でiPhoneが発売されてちょうど10年。ひずみが是正されるかは不透明だ。ある公取委幹部は「通信料が高いままでは、消費者は初期負担が安い2年契約を結局選び、現状が変わらないかもしれない」と話す。硬直したスマホ市場を活性化できるか、秋の新機種投入に向けて携帯大手各社の本気度も問われる。