フランス、完封の原動力は中盤の3人
至言直言 水沼貴史
フランスの中盤の3人の完成度に驚いた。前寄りの位置に並ぶポグバ、マチュイディと、後方のカンテがつくる三角形が、ベルギーを完封する原動力だった。
出場停止明けのマチュイディは広く駆け回りながら、対面の右SBシャドリを抑える。ボールを奪う力と、前に正確にパスを送る能力も高い。ポグバはキーマンのフェライニを監視しながら、頻繁に最終ラインに入って高さを補う。カンテは他の2人の背後を幅広くカバー。時には判断良く前に出て、ボールを奪う。
立ち上がりこそサイドからの崩しで押し込まれたが、後半はベルギーにほとんど好機を与えていない。チームとしての約束事に加え、個々の判断が適切だった。象徴がポグバだろう。前回大会で見せたような、攻撃での破天荒なプレーは少ない。この日もエムバペへの惜しいスルーパスくらいだったが、代わりに守備への意識は高まった。
目立つのが頻繁に周囲に声を掛ける姿。自分が前に行くから後ろを頼むというように常に意思疎通を図っている。両SBが22歳と若いだけに、自分が引っぱろうという意識が見える。個の強さが全面に出ていた4年前から成長し、チームプレーに徹する大人になった。
唯一の得点も組織と個が融合していた。ニアサイドに構える相手のフェライニは高い。上を越えるボールを出してもGKにキャッチされてしまう。何とかフェライニの前で合わせたい。狙いのスペースを空けるため、ポグバが前に入って相手を引き付ける。その隙にウンティティが飛び込み、頭で仕留めた。事前の分析に各人の動き、グリーズマンのキック。全てがかみ合った。
セットプレーで先制した後は引いて守る。この試合運びも計画通りだろう。ベルギーは、日本を沈めた鋭いカウンターが不発だった。発動できそうな場面は後半に1度だけあった。デブルイネが自陣ゴール前から中央に速い縦パス。E・アザールがキープするかつなげればというところだったが、すぐにファウルで潰され、好機はついえた。
カウンターに高さ、アザールのドリブル……。多くの攻め手があったベルギーだが、後半のフランスのように高く、緊密な壁を築かれた時、攻略する手が少しだけ欠けていた。最も可能性があったのは、前半に何本か出した低いクロス。DFが間一髪でクリアしたが、あわやというシーンもあった。ただ、そういう球を蹴れるのがデブルイネ1人では厳しい。3人以上が絡んでの細かい崩しもみられなかった。
一瞬たりとも目が離せない好ゲームを制し、フランスの意気はさらに上がるだろう。ジルーに得点が生まれればいうことはなかったが、前線の3人は相変わらず好調。その下を支える中盤のトライアングルも充実し、決勝は万全の態勢で臨めそうだ。
(サッカー解説者)