西武・栗山、光る一打 勝負強さに磨き
編集委員 篠山正幸
西武の17年目、栗山巧(34)が、勝負どころの一打でチームをけん引している。昨季は10年ぶりに規定打席に到達せず、世代交代の波に流されかけたが、再び輝きを増してきた。
7月1日。楽天戦を前に、本拠地メットライフドームのスタンドに、小児がんと戦う子どもたちや保護者と談笑する栗山の姿があった。
■「自らも元気もらっている」
闘病生活で外出もままならない子どもたちを少しでも励ますことができれば、という思いで2015年から球場への招待を続けており、今年はこの日で4回目。
子どもたちは闘病を続けながら、成長している。「ああ、この子、こんなに大きくなったんだ、と思うこともある。定期的にやることが大事だと思っている」。会うたびに変わる子どもたちに、自らも元気をもらっている。
チームの顔として、社会貢献活動でも先頭に立つ栗山だが、昨季は選手としての峠を過ぎたような寂しさを漂わせた。出場116試合、374打席、333打数84安打の打率2割5分2厘にとどまった。
レギュラーに定着したプロ7年目の08年、片岡治大(当時易之、現巨人コーチ)と並ぶリーグ最多の167安打をマークし、リーグ優勝、日本一に貢献した。この年以来続いていた100安打以上の記録も、昨季途切れた。
今年も代打でスタートしたが、同期の中村剛也が不振でラインアップからはずれるなどしたことにより、DHや左翼での先発など、出番が増えた。
4月18日の日本ハム戦では八回に2点打を放ち、0-8からの逆転勝ちに一役買った。20日のロッテ戦では八回に代打で起用され、右前に勝ち越し打を放った。
快調に首位を走ってきた西武も次第に投打がかみ合わなくなり、一時6ゲーム差をつけていた日本ハムに、ゲーム差なしというところまで迫られた。
7月1日の1戦は結果次第では首位陥落、という状況で迎えた試合だった。ちょっとした分岐点にもなりえたこの試合で、栗山は四回に同点打、七回にソロと劣勢からの勝利に貢献した。
7日の楽天戦では2-2の八回に決勝打となる5号ソロ。要所での一打に、クラッチヒッターとして培ってきた技術が凝縮されている。
■松井復帰「青春時代に戻ったよう」
心機一転というようにもみえる今季。チームの大先輩である、松井稼頭央(42)の15年ぶりの復帰が一つの刺激になったのは間違いない。
プロ入り時には仰ぎ見るばかりだった松井の復帰を「青春時代に戻ったよう」と喜んだのが栗山だった。
メジャーを経て25年目のシーズンを迎えた松井はコーチの肩書もついていたが、キャンプから、むしろ若手から何かを吸収しようという姿勢をみせていた。まだまだ、ベテラン然としてはいられない、と栗山や中村はあおられる思いだったのではないか。
優勝した08年から10年が経過する。栗山や中村ら主力の若さを思えば、あれから何度でも優勝できそうだったが、現実にはソフトバンクや日本ハムの後じんを拝してきた。数少なくなった前回の優勝メンバーの一人として、もう一度優勝したい、あの味を後輩たちにも味わってほしいとの思いは強い。
この数年はチームの「精神的支柱」と表現されるようになっていたが、まだまだバットでも支柱になれるし、プレーで引っ張らなければならない。初めて優勝争いに臨むメンバーが多いなか、シーズンが深まるにつれ、経験者の存在感は増していくに違いない。