ロシア延長後半に同点弾 負けても誇りの開催国
絶叫、合唱、大歓声。4万人を超すロシア人で埋め尽くされたソチのスタジアムが、プレーのたびに地鳴りで揺れた。
まずは31分。ワンツーパスのリターンをやや正面で受けたチェリシェフが、左に持ち出してすかさず振り抜く。創造性は乏しいロシアの放った、思い切りのいい意外性を伴ったシュート。これがまたとないコースへ飛んだ。クロアチアを慌てさせる先制点に会場はやんや、やんやの大騒ぎに。
ロシアの選手が突撃するたびに「ワー」と沸き、やがて「アァ……」としぼむ。攻撃ではなかなか決定機を作れなかったからだが、それでも115分の同点弾には全員が総立ちで泣きださんばかりのフィーバーだ。ジャゴエフのFKにフェルナンデスが飛び込み頭でゴール隅へ。「信じられない」と頭を抱えるファン、あちこちではためくロシア国旗の波、波……。
会見場に現れたチェルチェソフ監督は敗者の顔などしていない。「我々はピッチで自分たちの価値を示した。やり遂げたのだ」。軍隊用語を引き合いに出し、冗舌が止まらない。「戦前は期待が低かっただと? 君は驚いたかもしれないが、自国の代表チームを信頼しない国などあるのかね。そうか、君はイタリアか。では仕方ないな」「我々は自分のチームを信頼していたし、一生懸命やる我々をやがて人々が信じ始めたのだ。この代表チームは信頼に値した」
スペイン戦と同じく、集中と寄せを怠らない守備が強国を阻む盾となった。走行距離上位4人がロシアで、スプリント回数も際立っていた。世界ランク70位の開催国が4強にまで手をかけかけた快進撃。会場を去るチェルチェソフ監督は万雷の拍手で見送られた。
(ソチ=岸名章友)