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オリックス・山本、不動のセットアッパー

度胸と制球、登板楽しむ

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「完投してこそ投手」と言われたのは金田正一や鈴木啓示の時代。打高投低になった今のプロ野球では、ブルペンを空にする継投が花盛りだ。そこで脚光を浴びるのが勝ち試合を締めくくるクローザー。最近では八回に登板し、九回の仕上げ役にバトンを渡すセットアッパーも注目されるようになった。

今シーズン、とりわけ活躍が目立つセットアッパーに、オリックスの山本由伸がいる。2017年、宮崎・都城高からドラフト4位で入団した19歳の本格速球派右腕。新人だった昨季は5先発で1勝1敗だった。

今季もオープン戦までは先発候補だった。だが、前のクローザー平野佳寿が大リーグ入りし、故障者も続出して救援陣が手薄になった。そこで山本が救援組に回されたのだが、これが見事にはまった。

4月24日に1軍入り。当初はビハインドの展開で救援起用される、いわゆる"負けパターン"に組み込まれていた。ところが、140キロ台後半の速球と高速スライダーで押す投球は、1イニング限定の救援だと十分に通用した。

救援転向3戦目、4月28日のソフトバンク戦で初のホールド(一定の条件を満たした中継ぎ投手に付与される記録)をマークした。2点リードの八回、先発西勇輝のあとを受けて登板。3打者をピシャリと抑えて新クローザー増井浩俊につなぐ、見事なセットアッパーぶりだった。このあとはトントン拍子。"中継ぎエース"と呼んでもいい、安定した投球を見せた。

5月から6月にかけてのセ・パ交流戦はパの新鋭にとって名前を売るチャンス。ここでも山本は10登板、1勝8ホールドを挙げ、交流戦MVPの同僚、吉田正尚に劣らぬ大活躍だった。

力が認められるとマークもされる。再開したペナントレースでは3打者をピシャリ、ばかりではない。だがホールドを順調に積み重ねている。走者を許しても、併殺で切り抜けることが多い。度胸がよく、慌てずに低めをつく制球もいいからだ。なにより、「大事なところで使われて、やりがいがある」と、登板を楽しんでいるのがいい。

クローザーほどには目立たぬ中継ぎ陣の労に報いるタイトルに「最優秀中継ぎ投手」がある。ホールドと救援勝利の合計をホールドポイント(HP)として、最多投手を顕彰する。山本は6日現在、パ・リーグでトップの26HP(救援勝利4、22ホールド)をマークしている。タイトルを取るようなら、推定800万円の年俸は飛躍的に跳ね上がるだろう。=敬称略

(スポーツライター 浜田昭八)

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