アサド政権軍、シリア南部で大規模攻撃 空爆600回
【イスタンブール=佐野彰洋】シリアのアサド政権軍が反体制派からの奪還を目指す南部ダルアー県で大規模攻勢をかけている。シリア人権監視団(英国)によると、4日深夜から5日にかけて600回以上の空爆を実施した。政権軍はヨルダンとの国境まで6キロメートルを切る地点まで迫った。攻撃を開始した6月19日以降、民間人の死者は約150人に達したという。
4日以降の空爆は、停戦交渉が重火器の引き渡し条件などを巡って決裂したことで激しさを増したもようだ。空爆にはアサド政権の後ろ盾であるロシア軍も加わり、非人道兵器の「たる爆弾」も使用されているという。
ダルアー県は2017年7月に米国、ロシア、隣国ヨルダンが停戦に合意した「安全地帯」だが、合意は形骸化している。
戦闘や空爆を逃れた避難民は約30万人に達する。ヨルダンやイスラエルが占領するゴラン高原に向けて避難しているが、両国は受け入れを拒んでいる。食料や水、医療物資などの不足が深刻化している。
アサド政権軍は18年4月、首都ダマスカス近郊で反体制派が拠点としていた東グータ地区を制圧した。残る反体制派拠点のうち、ダルアー県と北西部イドリブ県の奪還を急いでいる。