スペイン敗退 一つのサイクルの終焉
世界王者として臨んだ4年前のブラジル大会は1次リーグ敗退。そして今回は決勝トーナメント1回戦で開催国のロシアにPK戦で敗れた。スペインの2大会連続の"惨敗"は、一世を風靡した面々の退出を促すことになるのだろう。
長年、代表の屋台骨であり続けたピケ、ブスケツはこの試合も精彩を欠いた。ピケは不必要なハンドで同点PKを進呈した。高齢化の批判を浴びたドイツ栄光の戦士と同様、クラブと代表のタフな戦いを兼務するには、いささかトウが立ちすぎていたようだ。
イエロ監督はこの日、イニエスタをベンチに置き、コケをブスケツと組ませて守りの強化を図った。長丁場の激戦を見越したのか、イニエスタは攻撃のタクトをシルバから途中で引き継ぐ要員とした。その狙いは達せられたもののシルバとイニエスタが同時にピッチに立たないことで、攻撃から精度や意外性が損なわれたことも否めない。
PK戦ではGKデヘアにそぞろ哀れを催した。この日の16強対決はどちらもPK戦にもつれ込んだが、ロシアのアキンフェーフ、デンマークのシュマイケル、クロアチアのスバシッチの満点の気迫に比べると、デヘアにはキッカーを飲み込むオーラが皆無だった。
大会初戦でポルトガルのクリスティアノ・ロナルドにハットトリックを決められた際、一緒に生気まで抜き取られたか。
ロシア戦のスペインはボールを圧倒的に持ち続け(保持率74%)、シュート数でも25対6(枠内シュート数は9対1)と大差をつけた。パスの総数は1137本、成功率は91%という信じ難い数値に達した。
そうしたことも含め、イエロ監督は選手に一定の評価を与えた。そして「宝くじのようなPK戦」の敗北でもって、チーム崩壊説やスペイン・スタイルの終焉(しゅうえん)が唱えられたりするのは心外そうだった。
2008年欧州選手権優勝から始まった、スペインの我が世の春。その一つのサイクルが終わったことは確か。それでもイエロ監督は繰り返し強調する。
「今後もスペインのアイデンティティー、スタイルを追求していくことは明らかなことだ」
(モスクワ=武智幸徳)