巨人・岡本、フライ打法開花 期待の生え抜き大砲
ペナントレース中盤に差し掛かり、首位広島に7.5ゲーム離されている巨人。いまひとつ波に乗れないチームにあって希望の光となっているのが、4年目を迎えた岡本和真(22)の覚醒だ。レギュラーに定着した今季はここまで打率3割5厘(リーグ9位)、打点45(同4位)、本塁打14(同7位)の好成績。期待の生え抜き大砲として、歩みを着実に進めている。(記録は7月2日現在)
6番スタメンで開幕した今季。マギー、ゲレーロらの調子がなかなか上がらず、6月2日のオリックス戦(京セラドーム大阪)でプロ初の4番に座ってからは、その座を守る。昨季は開幕スタメンに抜てきされながら、豪快なスイングが鳴りを潜めて打撃がこぢんまりとし、終わってみれば出場15試合にとどまった。その苦い経験があるからか「シーズンはまだまだ長いので……」と本人から威勢のいい言葉は聞けない。ただ、長距離砲としての成長の跡は随所で示している。
6月23日のヤクルト戦(東京ドーム)では、左腕ハフの胸元に食い込むカットボールを左中間スタンドまで運ぶソロ本塁打。岡本が「少し(バットの)芯を外されたが、右手でしっかり押し込むことができた」と振り返った技ありの一撃に、高橋由伸監督も「打ち方、バットの角度がいいからこそ、詰まってもああいう打球が出たのかな」とうなずいた。
同26日の広島戦(マツダスタジアム)では、左腕ジョンソンの投じた146キロの内角速球に振り負けず、左翼ポール際へ豪快に運んだ。「しっかり体を回転させて打つことができた」と本人も納得する、完璧な一発だった。
■合同自主トレで大きな刺激
日々の試合前練習のティー打撃では、トスされた球に強烈なバックスピンをかけ、ライナー性というよりフライを上げる感覚のスイングを繰り返している。「なるべくフライを上げようと思っている。打球に角度をつけようという意識」。長打という自身の持ち味を失いかけていた2017年のシーズンオフに、本塁打王6度の中村剛也(西武)に懇願し、合同自主トレーニングを敢行。球界随一の飛ばし屋の放つ、滞空時間の長い飛球に触れたことが、大きな刺激となっているようだ。
米大リーグでは17年シーズンに過去最多の6105本塁打が飛び出した。その背景にあるといわれるのが「フライボール革命」と呼ばれる打撃理論だ。データ分析に基づくと、ゴロよりもフライを打ち上げたほうが打率、長打率ともに向上するという考え方。この理論を導入したアストロズが昨季、ワールドシリーズを初制覇したことから大きな脚光を浴びた。
日本球界における「フライボール革命」の申し子とも呼べる岡本が、老舗球団の主砲として球界を代表するスラッガーへの道を歩めるか。直近の23打席連続無安打とバットは湿りがちだが、他球団からのマークがいっそう厳しくなることは、本人も覚悟していた。「フライを打とうと思っても、相手バッテリーが簡単にそうはさせてくれない。相手の攻め方にどう対応していくかが今後の課題」。真価が問われるのは、これからだ。
(常広文太)