阿波おどり、チケット販売に苦心 総踊り中止の影響も
徳島市は昨年以上の販売率目指す
今夏の阿波おどりの有料観覧席チケットの販売をめぐり、新たな主催者となった徳島市を中心とする実行委員会が苦心している。各演舞場ごとに売れ行きが偏る原因だったとして演出方法を今年から変えることにしたが、これに一部の有名踊り子団体(連)が協力しないと表明した。赤字体質脱却には販売率向上が不可欠だが、今年は開催日の曜日も悪い。不安を抱えたまま7月1日から一般販売が始まる。
実行委は29日、有名連のうち14団体が新しい演出に協力しない意向を伝えてきたことを受けて緊急会合を開き、全体のプログラムを組み直すことを確認した。会合の後、記者会見した実行委の委員長である徳島市の遠藤彰良市長は「一般販売の開始までにプログラムが間に合わない。非常に残念だ」と語った。
徳島市の阿波おどりでは今年も例年同様、有料観覧席で有名連の踊りを楽しめる演舞場を4カ所設置する。各日午後6時からと、午後8時半からの2部入れ替え制(約2時間)とするのも例年と同じ。有料観覧席のチケットは合計で10万6000枚用意する。
昨年まで第2部の販売率が演舞場ごとに大きな差が出ていたため、対策として実行委が打ち出したのが、第2部の南内町演舞場だけで実施されていた「総踊り」の中止だ。「総踊り」は有名連が一斉に演舞場になだれ込んで盛り上げる演出で、歌手のさだまさしさんの小説を映画化した「眉山」の印象的なシーンとしても知られる。
「総踊り」がみられない有料演舞場のチケット販売を底上げするため、今年は4つの演舞場それぞれにフィナーレで有名連が相次いで踊るという新たな演出を計画。徳島市の遠藤市長は「今年の目玉になる」と強調し、チケット販売率の偏りも是正できると期待していた。だが、この演出に不満を持つ有名連がチケットの一般販売直前に協力を拒むという異例の事態になっている。
6月1日から旅行業者向けに売り出したチケットは1万9000枚。実行委事務局によると「ほぼ例年並みの水準」という。一方、「総踊り」が実施されていた南内町演舞場に限定で設置される特別席は15日から先行販売を受け付けているものの、用意した900枚のチケットの販売率は約7割にとどまっている。
販売率向上を狙い、これまで最も販売が芳しくなかった自由席(C席)の価格を今年は前売り、当日ともに100円下げた。だが、指定席は従来のまま価格を据え置いた。諮問機関である阿波おどり運営協議会のメンバーから「もっと柔軟に価格を決めてはどうか」との提案も出されたが、対応は間に合わなかった。
昨年までの主催者であった徳島市観光協会の累積赤字問題をきっかけに、割り当てが不透明だと批判をされた「主催者枠」の販売枚数は、今年1万2760枚と昨年から7000枚以上減らす。この結果、7月1日に始まる一般販売では7万枚を超えるチケットを売らなければならない。
チケットの販売動向に関心が集まるのは、阿波おどり事業の収入計画のうち74%が入場料収入だからだ。実行委が掲げる赤字体質脱却にはチケット販売率をいかに高めるかがカギを握る。
遠藤市長は「なんとか昨年の販売率(84.4%)を上回りたい」と語る。ただ、昨年の開催期間は土日を含んでいた。今年は日曜日から始まって水曜日が最終日。販売率が下がる傾向のある曜日配列が悪い年だけに、遠藤市長は「限られた時間だがあらゆる策でPRをしなければならない」と危機感を強めている。
(徳島支局長 長谷川岳志)