イラン首都でデモ、通貨急落に抗議 米制裁が打撃
【イスタンブール=佐野彰洋】トランプ米政権によるイラン核合意の離脱表明で、イラン経済の苦境が深まっている。25日には首都テヘランの「グランドバザール」で、通貨リアルの急落に抗議する商店主が店舗を一斉に閉鎖した。治安当局が国会へ向かうデモ隊に催涙ガスで制圧を図る場面もみられた。英BBCによると、テヘランでの抗議行動としては2012年以降で最大規模という。
米が核合意離脱に伴う対イラン制裁の再開を表明したことで、イランから撤退したり投資を見直したりする企業が相次ぐ。通貨の急落で物価は高騰し、消費にも急ブレーキがかかっている。
通貨当局は4月に公定レートを1ドル=4万2000リアルに切り下げたが、実勢レートは下落が続く。5月のトランプ米大統領による核合意離脱表明前に同6万5000リアルだった実勢レートは、直近では同9万リアル程度まで暴落しているという。
イランのロウハニ大統領は26日のテレビ演説で「市場に注入する十分な外貨がある」と述べ、不安の沈静化を図った。「心理的、経済的、政治的な戦争」を仕掛けていると米国を非難した。
15年に米中ロ英独仏の6カ国がイランと結んだ核合意は、イランの核開発を厳しく制限する代わりに、対イラン制裁を緩和した。国際通貨基金(IMF)によると、15年に1.6%減だったイランの実質成長率は、欧州からの投資流入や原油輸出の拡大で16年に12.5%増を記録していた。