机をキレイに、書類は頻度で3分類
忙しさを理由に、机の上に大量の書類をためてしまう――。そんな経験を持つビジネスパーソンは多いのではないだろうか。肝心な時に必要な書類が見つからないと時間の無駄になるだけでなく、仕事の質にまで影響する。どうすれば机の上をきれいにして、快適に仕事を進められるか。コクヨのワークスタイル研究所で働き方やオフィス環境を研究している斎藤敦子氏に話を聞いた。
――机の上がきれいだとどんな効果がありますか。
「コクヨの調査では一般的な社会人は毎日20分ほど、年間では数十時間もの時間を『書類探し』に費やしていることが分かっている。時間が無駄なだけでなく、イライラすれば仕事の質にも悪影響を与えてしまう。きれいな机で必要な書類がどこにあるか分かっているほうが、ゆとりをもって効率的に仕事ができ、アイデアも浮かびやすい」
「社員一人ひとりが書類探しに使う時間を減らせれば、会社全体の労働生産性も大きく上がる。働き方改革が進むなか、机の上の整理は単なる個人の問題にはとどまらない。労働生産性を担保した上での労働時間の削減など、働き方改革は経営者の重要な経営課題となっている。社員一人ひとりの机の上の整理は、働き方改革とも密接に結びついている」
――具体的に、どのようにすればよいですか。
「まずは、どのような仕事を、どのような目的で、どのようなスケジュールで進めるかを念頭に置くことだ。自分が仕事をする様子をイメージして、必要となる書類の優先順位や使う頻度を想定する」
「書類を入り口の段階で3つの種類に分けることが大事だ。(1)顧客との契約書など長期間の保存が必要なもの(2)1つのプロジェクトなど中長期で保管するもの(3)1日や数日だけ保管するもの――に分類する。長く置いておく必要がある保存と、そのうち捨てる保管の違いを意識して、3つに分類する」
――書類を整理した上で、机の上の整理はどのように進めればいいですか。
「書類の使用頻度と、現時点での状態で分けたマトリクスで分類する。頻度が高く現在使用中の書類はボールペンなどの文具と同じく手がすぐ届くところに置く。使用頻度が特に高いマニュアルやカタログなども自分の机の上に置く方が便利だ。使用頻度も低く、終了した企画などの書類は捨てる」
「使用頻度は低いが、定期的に更新が必要な書類はデータとして残す『デジタル化』を勧める。使用頻度がそこまで高くないが、複数の人がみる書類も共有管理するといい。デジタル化できるものはクラウドで共有すれば複数の机の上から一気に書類が減る。若い世代では自然とデジタル化する人も多い。紙に愛着のある人も意識的にデジタル化することが大事だ」
デジタル化で無駄省く
――他にも書類を少なくする方法はありますか。
「訪問先の企業が書類や冊子を用意してくれていても、ホームページやインターネットなどにある公開情報はできるだけもらわないよう意識するといい。これだけ情報通信が発達した世界では、最新の情報は紙媒体でなく企業のホームページなどでデジタル化されていることが多いからだ」
「オフィス移転では7~8割の書類は捨てられるという調査結果も出ている。一人につき(書類をそのまま積み上げた場合の高さで)3メートルぐらいの書類があるが、2メートル以上は必要のない書類ということになる。意識してみると、机には大量のいらない書類があることに気がつくはずだ」
――机の上が整理されていないことでの会社への影響は。
「病気や万が一の事故などで欠勤したりと、本人が職場にいないときに他の人が代わりに仕事を担うことがある。そのようなとき、必要な書類が整理整頓されていないと、時間が無駄にかかるか、場合によっては仕事にならなくなってしまう」
「また整理されていない机では、重要な書類を紛失するなどセキュリティーの面でも問題を抱えることになる。机の上は特定の社員固有のスペースでなく、会社のものだという意識を持つことも大事だ」
――会社としてどんな取り組みができますか。
「コクヨでは毎週水曜日の17時台に、音楽を流して社員全体で整理をする時間をとっている。役員や部長も積極的に参加して、会社全体で整理整頓をしようという環境作りを進めている。習慣づけることで、この時間以外であっても机の上をきれいにしようと意識できるようになる。個人にとっても会社全体にとってもよい結果になるはずだ」
(聞き手は企業報道部 藤岡昂)
[日経産業新聞6月25日付]