不屈のおっさん魂 長友や岡崎ら走る、狙う…
「オカ(岡崎)もいつも通りにGKの前でつぶれてくれて……。おっさんたちがつくったゴール」。岡崎と本田、ともに32歳の意地がたぐり寄せた後半の同点弾に、同学年の長友の声が弾んだ。自身も両チーム最長となる11.08キロメートルを走った。「高齢」「下り坂」と批判されても、なお仕事を果たせる選手であることの証拠だろう。
ボランチ柴崎は走行距離が長友に次ぐ10.66キロメートル。CB昌子は国際Aマッチ14試合目らしからぬ堂々ぶりでFWを抑え、右SB酒井宏はこれぞ欧州基準といいたくなる安定感だ。それぞれ26、25、28歳。チーム全体を見渡せば、高齢化で硬直化しているわけでもない。
セネガルを相手に日本が繰り広げたサッカーは、長友ら「おっさん」が4年前に追い求めていたスタイルの再興のようにもみえた。ボールを動かしつつ、空いたスペースへ人が動き、そこへボールを入れる。その積み重ねでゴールへ向かう。
セネガルの守備は連係してボールを奪いに来るまでではなかったから、セカンドボールは日本が拾え、前を向いてボールも持てた。西野監督の「積極的にいけ」というハッパを意気に感じた選手の「やってやる」(長友)という心理も加勢したとみえる。空間を空ける、走る、入れるの連続作業に躍動感があった。
後半、セネガルの好機らしい好機は数回だけ。にもかかわらずそのうちの1回を鋭く決められた。比べれば、コツコツとチャンスをつくり続けた日本はなんと非効率かといわれるかもしれない。
それでも、またたく間にゴール前へ到達する肉体的スピードを持たない日本は、空間を見いだしてリレーしていく速さで「縦の鋭さ」を出す方が向いていると思われる。あるいはボールを動かす前提のうえに、縦への速さを組み込む日本なりの方法論を見つけていくことではないだろうか。
前半の乾の同点弾は柴崎の1本の長いパスから始まり、ものの10秒も要していない。つくり上げた好機の多くは、時間をかけるだけのボール保持が陥りがちな、もたついた遅攻のたぐいではなかった。ボールを持ち自分たちが攻撃権を手にすることと、手早い攻めは矛盾しない。
西野監督がこだわるものは、かつてザッケローニ元監督が日本選手の特性に合わせて築こうとし、遡ってオシム元監督が「日本サッカーの日本化」として探求した方向性の系譜に連なるものだ。1次リーグ突破に大きく前進した西野ジャパンがどこか年季が入っていたようにみえたのは、これまでの堆積が化石ではなく土壌となって生きていたからだろう。
(岸名章友)