ベルギー快勝、オープンな攻め合いに自信
初めのチャンスでゴールが生まれると、サッカーはうんと楽になる。初戦で白星をおさめておけば、1次リーグを通じて相手を見おろして戦える。格下の守備固めに煩わされることもない。このベルトコンベヤーにうまく乗ったのがベルギーだ。
初出場のパナマ相手に3-0で勝った後のチュニジア戦。6分、ペナルティーエリア右隅の線上あたりでE・アザールが、チュニジアのS・ベンユセフに倒された。主審は迷わずペナルティースポットを指し示す。このPKをE・アザールが自分で決めると、ベルギーはさっそくベルトに乗った。あとは前に運ばれながら、行きずりにいくつも実を結んでいるゴールチャンスを賞味するだけである。
「楽になったよ。スペースができて、こちらがカウンターを仕掛けられた」。そう語ったマン・オブ・ザ・マッチのE・アザールは、51分にもチュニジアの防御線の裏に抜け出て、縦パス1本でごちそうにありついている。
「彼ら(チュニジア)は勝たないといけなかったからね」とマルティネス監督。2点を失ったのはいただけないと反省を語りつつ、オープンな攻め合いになれば負けるはずがない、という自負をにじませた。
イングランドとの初戦の終了寸前に決勝点を入れられたチュニジアには気の毒な、見る者にとっても試合の興趣をそぐPKだったといえようか。だが、ひと昔前なら温情をもってFKに格下げされたかもしれないこの種の反則に、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)を背にした主審は厳しくならざるをえない。選手の反則のみならず、審判の目こぼしもビデオは映像におさめているからだ。
チュニジアは2連敗。破産を先延ばしにするはずの窮余のタックルが身を滅ぼした格好だが、マールル監督の感想は実に淡泊。「しかたがない。あれ(PK)がなくてもいずれ失点はしたよ」。まったくそのとおり、というほかない。
(モスクワ=阿刀田寛)