大阪北部地震の大規模断水、老朽水道管が引き金
大阪府北部で最大震度6弱を観測した地震では、大阪府高槻市、箕面市などで約9万戸が一時断水に追い込まれた。引き金となったのが40年の耐用年数を10年以上超える水道管の破裂だった。府では設置から40年超の水道管が約3割を占め、財政難などを理由に更新が十分に進んでいるとはいえないのが現状。南海トラフ地震なども懸念される中、自治体側は改めて対策の強化を迫られた形だ。
専門家は「破断による被害想定の大きさに応じ、優先順位を付けて老朽管の更新を急ぐべきだ」と指摘している。
地震の発生した18日午前、高槻市内を走る直径90センチの水道管が大きな揺れとともに破断した。道路は陥没、あふれた水で周囲は池のようになった。
同市内のマンションに住む女性(63)の自宅は18日昼すぎから断水。「水の備えはほぼ無く、途方に暮れた」と話す。トイレは近くのホームセンターを利用させてもらったという。同日夜には少量の水が出たが濁っており、「料理はできず、冷凍食品ばかり食べて疲れが増した」と話す。
厚生労働省などによると、水道管が破損し、各地の貯水池の水も底をついたことによる断水は高槻市で約8万6000戸(減圧給水含む)、箕面市と吹田市で約8600戸に及んだ。19日には解消されたが、自治体などの給水車には長蛇の列ができた。
高槻市内で18日午前に破裂した水道管は浄水場から市内に水を引く主要な管で、設置から55年が経過。法令が定める耐用年数40年を大きく超える老朽水道管だった。府内で他に破損した吹田市内の水道管(直径80センチ)も53年が過ぎていた。
同省などによると設置40年超の水道管の割合は、大阪府が2016年度末で29.3%と全国平均の14.8%を大幅に上回り、都道府県で最多。東京都は13.5%で大阪は突出している。
府内では戦後の人口増に伴う水道需要の拡大に対応するため、府が1951年、淀川を水源として市町村に水の供給を開始、70年代にかけて水道管の整備が本格化した。
大阪市を除く大阪府では原則、河川から各貯水池までの水道管を府から事業を承継し、各市町村で構成する大阪広域水道企業団が管理。貯水池から各戸までを地元の市町村が担う。今回の大規模断水につながった水道管は広域水道企業団が管理するものだった。
企業団の担当者は「今回破断した水道管以外にも老朽化した水道管は多い」と話す。破裂した2本の水道管は、これまで異常は確認されず改修計画の対象ではなかった。
企業団は送水管の二重化などを含む更新を進めるが、耐用年数を超える管は年々増加。節水技術の発達で水道料金による収入が減少する中、財政負担の重さが更新の足かせとなっている。
関西学院大の長峯純一教授(公共経済学)は「大規模災害は今後も懸念され、水道管の更新を加速することが不可欠だ。コスト削減を進めた上で水道料金を値上げしてでも、十分な財源を確保すべきだ」と指摘。「ただ古い順から改修するのでなく、人口密集地や活断層の近くなど破損による被害が大きいと想定される地域から優先順位をつけ、効率的に資金を投入する必要がある」と話す。