ラグビー近鉄、トップリーグ復帰へ挑戦の日々
新指揮官に有水氏、連動性磨く
ラグビーの近鉄が新シーズンへ始動した。昨季はトップリーグ(TL)で最下位に終わり、下部のトップチャレンジリーグに降格。ラグビー部創部90周年となる2019年をTLで迎えるべく、チームは外部の人材に再建役を託した。
昨季はシーズン後半にかけ神戸製鋼や東芝に6連敗。総合順位決定トーナメントで2戦2敗し、最下位とトップチャレンジリーグへの降格が決まった。
坪井章監督が退任し、新たにヘッドコーチ(HC)に就任したのは早大や日本国土開発でプレーした有水剛志氏。引退後は早大とU-20(20歳以下)日本代表でFWコーチを務めた。直近では女子15人制日本代表のHCとして17年、チームを15年ぶりのワールドカップ出場に導き、日本ラグビー協会が今年創設した指導者の表彰制度で日本代表カテゴリーコーチ賞を受賞している。
有水HCが昨季の近鉄の戦いを検証した感想は「グラウンドにいる15人がばらばらだった」。あっさりボールを奪われる場面が多く、継続性に難があった。
原因を「セイムピクチャー、同じ絵を見られていなかった」と指摘する。局面ごとに有効な攻め方はこれだという「絵」を15人が共有していれば、少々パスが乱れようが長くボールを保持できるはず。そこで攻撃が途切れるのは意思疎通ができていなかったから。強みであるスクラムの質の向上といった具体策の前に、全員があうんの呼吸で動く連動性の醸成を目指す。
就任後、選手全員と個人面談した有水HCは近鉄の選手について「よくいえば素直。悪くいえばおとなしい、受け身」との印象を持った。首脳陣の指示を守る従順さは長所だが、自ら判断する能力が足りないと映る。自主性や判断力の乏しさが、同じ絵を描けない背景にある。
女子15人制日本代表を率いた当初、平気で菓子を食べるなど無自覚だった選手に有水HCは「ナショナルチームとしての文化をつくる」ことから手をつけた。その姿勢は現在にも重なるといえる。そもそも近鉄はかつて全国社会人大会を8度制し、強豪とうたわれたチーム。自主性や強い団結といった当時の文化を取り戻せば、輝きも戻るはずだと信じている。
近鉄OBでない日本人が実質的な指揮官を務めるのは、06年度から2年間HCを務めた浜村裕之氏以来、2人目。「大きなやりがいとプレッシャーを感じている」と話す有水HCが率いるトップチャレンジリーグでの戦い。1年でのTL復帰へ、まさに挑戦の日々となる。
(合六謙二)