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交流戦1位ヤクルト 復調の陰に泰然の将あり

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チーム低迷の理由を人材不足に求める監督は多い。「ほかの選手を使いたいが、調子のいい選手が見当たらない」といった具合に。ただ、ヤクルトの小川淳司監督からその手のぼやきを聞いたことがない。

昨季のヤクルトは故障者の続出に泣いた。椎間板ヘルニアでシーズンをまるまる棒に振った川端慎吾をはじめ、ウラディミール・バレンティン、畠山和洋、雄平といった主力が相次いで戦線から離脱。留守を預かった山田哲人が力んで不調に苦しんだこともあり、セ・リーグ最下位に沈んだ。今季、シニアディレクターから返り咲いた小川監督は耐性ができたのか、故障者が出ようが不調の選手が多かろうが、泰然としているようにみえる。誰かが抜けたら残った面々で乗り切るまで、と柔軟性をもって対処しているかのようだ。

柔軟といえば、彼はよく私の話を聞いてくれる。球場にいくと、歩み寄ってきて「田尾さん、こういうときはどうしたらいいと思いますか」と意見を求めてくる。これはなかなかできることではない。監督のなかには「解説者にあれこれ話すといろんなところに漏れ伝わる」「毎試合見ていない人に何かを聞くのは嫌だ」などと考え、自分の考えだけに凝り固まった人がいる。その点、小川監督や日本ハムの栗山英樹監督は監督族のなかでは異質な存在で、よく話をしてくれる。

いろいろな人の意見を取り入れて采配に生かそうという思いが強いのだろう。もちろん、自身の考えとは相いれない助言を耳にすることもあるはず。それでもおしまいまで聞き、違うと思えば採用しないまで。小川監督が私のような一解説者の話に真摯に耳を傾けてくれるのも、どこにチームづくりのヒントが転がっているかわからないと思っているからだろう。

型にとらわれぬ姿勢、采配にも

型にとらわれない姿勢は采配にも生きている。開幕当初に抑えを務めた新外国人、マット・カラシティーの救援失敗が続くと、じきに石山泰稚に代えた。交流戦では近藤一樹と中尾輝に七、八回を託し、石山で締める継投パターンが定着。後ろがしっかりして負担が軽くなった先発投手が好投する好循環もあり、チーム初の交流戦勝率1位(12勝6敗で6割6分7厘)に輝いた。カラシティーにはあまり重圧のかからないイニングを任せると、ロングリリーフを成功させるなどして交流戦で3勝。柔軟な配置が各人の力を引き出した。

一時はセ・リーグで首位から11.5ゲームも離され、最下位に甘んじていたヤクルトが交流戦であのように息を吹き返すことは予想ができなかった。ただ、低迷しているときでも采配に反攻への決意が見て取れることがあった。最下位にもなると作戦が送りバントばかりになる監督は多いが、小川監督はそんな弱気な姿勢は見せない。走者を動かしたり、スクイズを試みたりと積極的に動くシーンが目立った。

高いリスクを負いつつハイリターンを求める姿勢を貫けるのは「いかに攻めるか。相手が嫌がる作戦は何か」と思考が前のめりだからだろう。守る側からすると、送りバントで走者が二塁に進まれても、労せずしてアウト1つを取れたことをよしとする場合がある。手堅い作戦ばかりのチームは相手を楽にするだけ、と小川監督はわかっているのだろう。

選手も作戦を素直に受け入れて遂行しているようにみえる。それは小川監督が現役時代、必ずしも超一流の選手ではなかったことと関係しているのではないか。「ここでこういう作戦を出されたら難しいのではないか」と選手の気持ちになって考えることができるから、一手一手に無謀さを感じない。これが名選手だった人が監督になると事情は異なる。現役時代に何でもできた自身を基準に物事を考え、打席に立つ選手の能力や場面を考慮しない作戦を命じてしまう。それで選手が失敗すれば「何でできないんだ」と怒る。

采配の責任は「俺が取る」の覚悟

セーフティースクイズという作戦がある。打者がバントし、いいところに転がれば三塁走者が走るものだが、本塁に突っ込んでいいかどうかの判断を走者に委ねるのは酷。相手の意表を突く意味でも、しょっちゅう使う手ではない。一方、投手が投球するとわかった時点で三塁走者がスタートする通常のスクイズは、バッテリーに外されたら走者が挟まれてアウトになる可能性が高い。そうなればサインを出した監督の責任になるのだが、ここに采配というものの要諦がある。

セーフティースクイズは投球がバットに当たらない限り走者は走らないから、外される怖さはない。アウトになるのは、走者が打球の転がり具合やコースを見誤って無理に突っ込んだり、飛び出して挟まれたりしたとき。つまり、失敗したときの責任が監督でなく選手に帰する作戦ということになる。

単に凡打するのならともかく、作戦失敗の責任まで負わされるのでは選手はつらい。極端にいえば年に一度、とっておきの作戦として繰り出すのはいいが、何度も試みては失敗し、そのたびに責任を押しつけられるようなら選手の心は監督から離れる。しょっちゅう使う手ではない、というのはこの点からもいえる。

小川監督の采配には「責任は全て俺が取る」という覚悟が見て取れる。良くも悪くもファミリーのような体質といわれるヤクルトにこれほど頼もしい父親役がいれば、選手との絆も強まるというものだ。2010年途中から14年までの監督時代(10年は代行)にAクラスを2度経験、退任後はシニアディレクターに就き、フロントの一員としてチームを俯瞰(ふかん)する目を養ったことが、柔軟で、それでいてしんの通った姿勢につながっているのかもしれない。結束の強い「小川家」の今後が楽しみだ。

(野球評論家 田尾安志)

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