香川、10番の本領 最高の舞台整った
日本、コロンビアに2-1
日本の背番号「10」は置き場所と周り次第でまだまだ輝ける。そんな予感を抱かせるだけのものがあった。
国際Aマッチ出場は93試合にものぼるが、香川が代表でトップ下を託される試合は意外に多くなかった。2014年W杯はそのポジションには本田が座り、左MFをあてがわれていた。アギーレ監督時代はトップ下を置かない4-3-3が主体だったし、縦方向のスピードに偏重したハリルホジッチ体制下では香川のような小回りの利く器用なアタッカーは優先順位が低かった。
今回は、大会直前に指揮官と方向性が変わるという曲折をへながら、2度目のW杯でようやくマイシートをつかんだようでもある。臥薪嘗胆(がしんしょうたん)に燃えるチームの意気込みと同様に、立ち上がりから出足鋭く立ち回った。サイドで相手をサンドイッチするプレス作業も抜かりがない。PK獲得に至った場面も、自陣から右アウトサイドで虚を突くように蹴り出した香川のパスから始まった。それを出したうえで、大迫のシュートのこぼれ球に詰めるところまで長い距離を走っている。
15分にはスペースでドリブルを開始、ヒョイと相手をかわし絶妙の間合いで左へラストパスを送った。合わせた乾のシュートがヒットしていれば1点ものの好機だった。
70分にベンチに退いたのが惜しまれるほどで、波長の合う乾、同じドイツ基準のプレースピードに乗れる大迫、そして香川のほしいタイミング、場所に後方から出してくれる柴崎など、技の確かな面々の中央に置けば、香川が中継点となって周囲が息づく。
歴代最強とうたわれながら結果が伴わなかった4年前の初戦の傷は消えはしない。「このW杯初戦を何に例えられるか考えていた。欧州チャンピオンズ・リーグやビッグクラブの大一番……でもそれを経験していてもW杯の初戦はまた違う。いろんな感情が湧き出て抑えるのが大変だった」「でもやはり(自分が積み上げてきたものを)自信に変えてやるしかない」
29歳にして本領を発揮する舞台が整ったとしても、遅すぎることはないだろう。
(サランスク=岸名章友)