災害時の外国人観光客ケア不十分 大阪地震で課題
大阪府北部で震度6弱を観測した地震では対応に戸惑う外国人観光客が多くみられ、災害情報をどう伝達するかという課題を浮き彫りにした。自治体は多言語で情報発信したり相談窓口を設けたりしたが、利用は低調。外国人向けの防災対策は居住者を対象としたものが多く、専門家は「観光客へのケアが不十分」と指摘する。
「Be careful of aftershocks」(余震に気をつけて)。大阪府は地震発生後にホームページのトップに英語のメッセージを表示。財団法人と協力して「災害時多言語支援センター」を立ち上げ、18日夕方からは英語による24時間の電話相談窓口を開いた。
しかし寄せられた問い合わせは「ガスが止まっている」「避難勧告が出ている地域を教えてほしい」といった、日本に居住する外国人からのものが大半だった。センター担当者は「旅行者にもっと気軽に相談してほしかった。窓口のPRに課題があるのかもしれない」と話す。
大阪観光局は「外国人観光客らがインターネットを通じて最新情報を得られるように」(担当者)と18日午後、府内の5千カ所でWi-Fi(ワイファイ)の利用時間の制限を撤廃した。だが平時から英語や中国語など8カ国語で観光客からの問い合わせに対応するコールセンターでは、地震関連の質問は数件にとどまったという。
一方、地震後、街中は情報を求める外国人観光客であふれた。大阪市港区のホテルで揺れに遭遇したスイス人のトゥンギ・ボベイさん(21)は館内放送などでは状況が分からず、スマートフォンで母国メディアのニュースをチェック。地震の大きさなどが分かったのは数時間後だった。
自治体などによる情報発信は「全く知らなかった」といい、「何が起こったのか不安だった」と話す。観光中の中国人男性(24)が頼ったのは中国版ツイッター、微博(ウェイボ)。しかし電車の運行状況などに関する英語や中国語の情報は見つけられず、情報を求めてたどり着いた駅の窓口には長蛇の列。「うんざりした」と振り返る。
都市防災に詳しい工学院大の久田嘉章教授は「災害時に外国人は情報過疎に陥りやすいなか、自治体は居住者を優先して支援してきた。観光客向けのケアは途上にある」と指摘する。国際交流に取り組む京都府国際センター(京都市下京区)には外国人向けの情報発信サービスがあるが、「基本的に日本に住む外国人が対象」であらかじめ登録が必要だ。
久田教授は観光客向けに情報を伝える有効策として交流サイト(SNS)や外国人の利用者が多いホームページの活用などを挙げ、「国や複数の自治体が連携する形で、様々な媒体を通じて自然に情報が広がるような工夫が求められている」と話す。