運も味方 セネガルが初戦飾る
黒星まみれのアフリカ勢の、これが最初の白星だ。セネガルにとって、8強入りした2002年日韓大会以来2度目のW杯。シセ監督は「アフリカのプレゼンスを示すことができて誇らしい」。16年前は主将だった監督に率いられ、「テランガのライオンたち」が欧州の強国をぱくりと平らげた。
2得点は半ば幸運の産物だった。37分の1点目はポーランドのオウンゴール。23歳のFWニャンが決めた60分の2点目がまた振るっていた。
けがで一度ピッチを出たニャンに手当てが施され、主審が再入場を認める合図を送る。勇んで駆けこむニャン。ちょうどポーランドが自陣へ大きくバックパスをしたところで、慌てて飛び出てきたGKシュチェンスニの鼻先でニャンはちょんとボールに触れて入れ違い、そのまま代表初得点を蹴りこんだ。
GKに任せてバックパスをやりすごしたDFベドナレクは、ニャンの再入場に気づかなかったのか。「ラッキーだった。でも僕らはこの幸運に値するプレーをしたと思う」と笑う若獅子が、太平楽なシマウマののど笛をかき切ったわけである。
セネガルの守備陣に、そういううかつな選手はいなかった。
「テランガ」とは助け合いを意味する、この国の美風を表す言葉。代表チームも互恵主義に貫かれていて、各人がポーランドのパスコースを切り続け、FWレバンドフスキを柵で囲って閉じ込めた。この大エースに許したシュートは直接FKを含む2本だけ。見張り役のDFクリバリは「僕だけじゃない。みんなの力さ」。獲物も手柄もみんなで山分けだ。
次はコロンビア相手に金星を挙げた日本と顔を合わせる。シセ監督はにこりともせず「言っただろう。日本を軽んじてはいけないと。次も難しい試合になる」。ライオンたちはまだ満腹しておらず、次の獲物を安く見てもいない。
(モスクワ=阿刀田寛)