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W杯ロシア大会の歴史的位置づけを考える

サッカージャーナリスト 大住良之

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4年に1度、世界を熱狂させるサッカーのお祭り、国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップが14日、始まる。ロシアの11都市、12スタジアムを舞台に繰り広げられる大会は7月15日の決勝まで、世界の耳目をくぎ付けにする。

2018年ロシア大会は1930年に始まったワールドカップの第21回大会。欧州の地で11回目の大会である。しかし過去10回の欧州での大会はすべて「旧西側」の国での開催で、「旧東側」でのワールドカップは今回が初めて。そこに、今大会の大きな意義がある。

ワールドカップは世界の大衆のお祭りである。政治家でも経営者でもなく、一般の人々が大量に動き、大衆と大衆が直接触れ合い、交流する最高の機会だ。それなら、ワールドカップは洗練された西欧や南米のサッカー大国だけでなく、できるだけいろいろな地域、いろいろな国で開催されるのがふさわしい。

旧東側というだけでなく、今回はロシアの「アジア側」の都市も舞台になっている。西野朗監督率いる日本代表がセネガルと対戦するエカテリンブルクはウラル山脈の東麓に位置し、正確にいえば「アジア」の都市である。

さまざまな歴史や文化を持つ11都市はロシアという国の多彩さと、素朴なスラブ系の人々との出会いを私たちに提供してくれるだろう。そして世界が「ロシア」という国以上にロシアの人々を知るようになることは、21世紀の世界にとって小さくない出来事のはずだ。

得点や退場などにビデオ判定

さて、サッカーに話を戻すと、ロシア大会が今後長く語られるのは間違いなくビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の導入だ。

長い間「人による判定」にこだわってきたFIFAが、ゴールラインを割ったかどうかの判定を補助する先進技術「ゴールライン・テクノロジー(GLT)」を初めてワールドカップで使用したのが14年。今回はさらに進め、得点や退場など試合結果に決定的な影響を与える分野に限ってビデオ判定をすることにした。

スタジアム外の施設にすべての試合映像を引き込み、上記の重大な案件でピッチ上の判定に疑義があると、ただちに多くの角度からの映像を参照して主審にアドバイスを送るシステム。わずか2年間の試験導入で正式承認に至ったのは、ジャンニ・インファンティノFIFA会長の強い要望があったからだといわれる。

現代のワールドカップでは試合ごとに数十台のテレビカメラが設置され、超スローを含めあらゆる角度からピッチ上の出来事を記録している。主審も副審も見ていなくても、テレビカメラがすべての出来事を白日の下にさらけ出してしまう。

06年ドイツ大会の決勝でイタリアのDFマテラッツィが突然ピッチに倒れたときは、主審と線審だけでなく、両チームベンチの間に位置する「第4の審判」も「その瞬間」を見ていなかった。フランスのジダンを退場に追い込んだのは、出来事の数分後にテレビのリプレー映像で描き出された、マテラッツィに強烈な頭突きをくらわすジダンの姿だった。この映像を参照したことをFIFAは最後まで認めなかったが、主審がジダンにレッドカードを示したタイミングから明らかだった。

背景にはテレビへの配慮

テレビの手前、これ以上明確な誤審を放置しておくことはできない。インファンティノ会長がVARの導入を急いだ背景には、明らかにテレビへの配慮がある。

ワールドカップはFIFAの収益の大半を生みだす「ドル箱」であり、その収入は主としてテレビ(放映権収入)からもたらされる。1998年大会まで全世界で100億円程度だったワールドカップの放映権料は、02年大会で10倍の約1000億円に急騰し、その後も高騰を続けていて今大会では3000億円だという(日本にはその6分の1の500億円が割り当てられた)。

15年のスキャンダルで首脳陣が総退陣した後、FIFAは16年からインファンティノ会長の手に握られている。彼が率いるFIFAは17年にすでに26年大会を48チームで開催することを決め、さらに次回の22年カタール大会から「48チーム制」を実施する可能性も示唆している。多くの国にチャンスを与えるためと説明するが、「48チーム制」の最大の目的は放映権収入をさらに増やすことにある。もし22年大会が48チームになれば、18年ロシア大会は32チームでの「最後の大会」となる。

ロシア大会は何よりも「VARの大会」である。しかしVARほど、ワールドカップが「テレビの、テレビによる、テレビのための大会」にどんどん変質し、その極致に至りつつあることを示す証拠はない。

さて、日本のサッカーにとってロシア大会はどのような歴史的位置づけとなるのだろうか。

日本サッカー協会は大会の2カ月前にバヒド・ハリルホジッチ監督を解任し、技術委員長だった西野新監督にワールドカップを託した。しかし現状の戦力から見て、1次リーグを突破するのは至難の業だ。何かの幸運を期待したいが、「幸運頼み」の時点で日本の戦力不足を認めていることになる。

勝てなければ、日本のサッカーは空前の「不況」に陥る恐れがある。今秋、日本代表は国内で6つの親善試合を予定しているが、どの試合も空席が目立つようになるだろう。放映権料収入が激減し、日本サッカー協会の財政は非常に苦しくなるに違いない。それぞれのホームタウンのサポーターをベースとするJリーグが急激に落ち込むことはないだろうが、影響は避けられない。

しかし、その責任が西野監督にあるわけではない。ハリルホジッチ前監督でもない。

最大の要因は本田圭佑、香川真司ら過去10年間日本のサッカーを支えてきた「世界に通用する選手」が長友佑都以外にいなくなったことにある。才能ある若手は出てきていても、10年代前半の本田や香川のような、必ず期待に応えてくれる、あるいは期待を超越した活躍をみせてくれる存在には至っていない。誰が監督でも、18年時点の日本代表をワールドカップで勝てるチームに仕立て上げるのは至難の業だろう。たとえ幸運が重なって1次リーグを勝ち上がることができたとしても、この現実から目をそらすことはできない。

「育成」の見直し欠かせず

そうした状況を抜け出し、再び活気のあるものにするキーワードは一つしかない。「育成」だ。

これまで、日本サッカー協会もJリーグも選手の育成に大きな力を注いできた。しかしそこから出てきたのは、全体的にレベルは上がっても強烈な個性に欠けるステレオタイプの選手ばかり。少なくともこの10年間、本田や香川に匹敵する個性は出ていない。

18年ロシア大会は日本にとって苦く、思い出したくない記憶になるかもしれない。しかし10年後、20年後に「あの悔しさがあったからこそ育成を一から見直し、国際的なタレントが次々と出るようになったいまがある」と言えるようにしなければならないと思う。

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