イタリア新首相、G7で独仏英との結束優先
先行きに不安も
【シャルルボワ(カナダ東部)=白石透冴】8~9日の日米欧主要7カ国(G7)首脳会議(シャルルボワ・サミット)で、イタリアのコンテ首相は対ロシアや貿易政策で他の欧州メンバーとの結束を優先した。独自の意見を強く主張するとの予測もあったが、欧州勢は何とか足並みをそろえた。ただコンテ政権は欧州連合(EU)に懐疑的な連立与党に支えられており、結束の維持には不安も残る。
「ロシアとの対話は大事だが、(ウクライナ東部の停戦を定めた)ミンスク合意は順守されていない」。今回外交デビューとなったコンテ氏は9日、ロシアをすぐG7に復帰させる条件は整っていないとの認識を示した。ドイツ、フランス、英国と同じ考え方だ。
6日に発足したばかりのコンテ政権は大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」の連立政権だ。ロシアとの接近を主張するほか、欧州連合(EU)や自由貿易に懐疑的な立場で、G7会議の開幕前には意見の対立が危惧されていた。
ただフタを開けてみれば、コンテ氏は欧州の結束を優先した。開幕直前に開かれた欧州メンバーの会合でも自由貿易について、「ルールに基づいた多国間の貿易」などが重要との独仏英の考えに賛成した。
一方、EUのトゥスク大統領などとの会談時には、難民申請の手続きを定めた「ダブリン規則」の改正の必要性などを伝えた。「言うことは言った」という国内支持者向けのアピールだ。
保護主義的な政策を取るトランプ米大統領との共鳴も予想されたが、同氏との会談後に「とても友好的な会談だった。お互いに率直に話せた」などと話すにとどめた。
コンテ氏は政治経験がないため、まずは欧州メンバーとの正面衝突を避けたとの見方がある。外交の交渉にも慣れていない同氏が今回立場を強く主張しても、同調や譲歩を得られる可能性は低かった。発足してあまりにも日が浅いため十分に戦略を練れていなかったとの見方もある。
とはいえ連立与党は公約に「イタリア産の農産物を守る」と盛り込むなど、自由貿易には懐疑的だ。五つ星のディ・マイオ党首は8日「ロシア制裁は我々に害となっている」と親ロ的な立場を強調した。独仏英との違いがじわじわと顕在化する可能性も残っている。
G7サミット(主要7カ国首脳会議)が2023年5月19~21日に広島市で開催。会議の議題や各国首脳の動きなど最新ニュースをまとめました。