勝つために「今、何をすべきか」に全力
4年前のワールドカップ(W杯)で味わったのは、現実の厳しさだった。ブンデスリーガで初めて2桁得点(15点)をマークし、意気揚々とブラジルに乗り込んで、自信にあふれた気持ちは本番で打ち砕かれた。僕はW杯で何もできなかった。勝つためにブラジルへ行ったのに勝利にこだわり尽くしただろうか? そんな思いが強く残った。
1点リードで迎えた初戦のコートジボワール戦のハーフタイム。「もっと攻めよう」というチームメートに対し、「1点を守るような戦いをすべきだ」とはいえなかった。「もっといいサッカー」「自分たちのサッカー」の先に勝利があるのではなく、勝利や勝ち点を手にすることを優先すべきだったのに。
5月31日。ロシア大会に向けた日本代表のメンバー発表会見の少し前に、サッカー協会から電話で代表入りを伝えられた。足首を負傷し、1カ月以上もリハビリを続けた僕のメンバー入りの可能性は低い状況だった。30日のガーナ戦に出場したが、スパイクを履いたのは4日前だった。そういう状態にもかかわらず選んでもらえた。喜び以上に過去にないほどの強くて重い使命感と責任感が生まれた。
レスターでの3年間、世界のトップ選手がそろうビッグチーム相手に戦ってきた経験を、日本代表に還元させなくてはならない。勝ち点を手にするため、勝利するために現実から目をそらさずに「役に立つ」存在になりたい。
この4年間、ずっとブラジルで味わった現実やイメージが消えることはなかった。格上との対戦、不利な状況であっても、勝つために僕には何ができるか、何をすべきかを考え続けてきた。
「こうすれば勝てる」という明確な答えは存在しない。サッカーは相手のいる競技だから、大切なのは「今、何をするか」だと思っている。先発であれ、途中出場であれ、起用された状況の中でチームを変える仕事、効果を示すために力を出し切りたい。
状況に応じて、割り切った戦いをすべき場面もあるだろう。ボールをつなぐ形、縦に速く攻める形、こぼれ球を拾う展開を狙うこともあるはずだ。戦い方は一つではない。そのとき、そのときの「現実」に対峙しながらチームメートの強みを生かす戦いを選択する。そのために役に立つプレーをしたい。
自分のコンディションについては、これからもっと良くなる予感しかない。これ以上悪くなることはないだろう。それはチームも同じかもしれない。
僕に限らず、今回のチームは様々な経験を重ねた選手がそろった。そして今、誰もが「このままでは厳しい」という危機感を抱いている。これが「最後の戦い」という開き直った状態になれれば、強さを発揮できるに違いない。
(サッカー日本代表 岡崎慎司)