イタリア新首相「我々はポピュリズム政権」 上院で所信表明
【ウィーン=細川倫太郎】イタリアの新首相に就いたジュセッペ・コンテ氏は5日、議会上院で所信表明演説をした。新政権がポピュリズム(大衆迎合主義)政権と呼ばれていることについて「市民の声を聞くのがポピュリズムならば、我々はその通りだ」と述べた。新政権は上下院の信任を経て正式に始動する。
コンテ氏は「イタリアの変革のためのプロジェクト。決意と謙虚とともに責任を果たしていく」と強調。経済政策については「緊縮でなく、経済の富を増やすことで公的債務を減らしたい」と述べ、歳出拡大で景気を刺激する方針を示した。目玉公約である失業者らへの最低所得保障や大幅減税を実行する方針だ。
コンテ氏を支えるポピュリズム政党「五つ星運動」と極右「同盟」はいずれも欧州連合(EU)の方針を疑問視する欧州懐疑派とされる。イタリアの公的債務はユーロ圏で最大で、EUは削減を求めている。コンテ氏は「より強く、より公平な欧州を求めていく権利がある」と指摘。EUに財政ルールの見直しなどを迫る可能性を示唆した。
移民への関心も高い。コンテ氏は「我々は人種差別主義者でないが、受け入れのあり方を見直す」と主張。正規移民は保護する一方、不法移民は迅速に送還する考えを明らかにした。
外交では親ロシアの姿勢。対ロシア制裁の解除を求めていくと語った。
金融市場では放漫財政やEUとの関係悪化を嫌気し、5日にはイタリアの代表的な株価指数FTSE・MIBが前日に比べて一時、1%弱下がった。10年物国債の利回りは前日の2.5%台から一時、2.7%台に上昇(価格は下落)した。
イタリアでは3月4日投開票の総選挙から連立協議が長引き、約3カ月の政治空白が続いた。最終的に五つ星と同盟が連立で合意。法学者のコンテ氏を新首相に推薦し、マッタレッラ大統領が内閣を承認した。ただ、コンテ氏は政治経験はゼロで、その手腕は不安視されている。
コンテ氏は8日からカナダで始まる主要7カ国(G7)の首脳会議(サミット)に出席し、外交デビューする予定だ。