「サイバー攻撃 容易な現状は問題」専門家ら討論
世界デジタルサミット(日本経済新聞社・総務省主催)は5日午後、開催20回を記念したセッションを開き、「サイバー・ウォーフェアと世界協調」をテーマに情報セキュリティーの専門家6人がパネル討論した。
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の三角育生副センター長は「20年前から色々なサイバー攻撃があったが変わったのはICT(情報通信技術)を使う人の輪が広がったこと。サイバー攻撃に対する参入障壁が低くなった」と語った。
元経済産業省大臣官房の伊東寛氏も「冷戦時代のミサイル攻撃は反撃を恐れ、抑止力が働いたが、サイバー攻撃は誰が攻撃しているのか分かりにくい。抑止力が働きにくい」と警鐘を鳴らした。
嘘の情報を意図的に流す「フェイクニュース」についても議論になった。慶大大学院の土屋大洋教授は「日本は米英に比べてネットを監視する体制が弱い。悪質な人を監視する必要性について国民的な議論が必要」と話した。現在の電気通信法について「サイバー攻撃に対応した改正が必要」と提案した。
総務省の谷脇康彦政策統括官もフェイクニュースは「ボットや閲覧者の嗜好に合わせた広告表示技術が嘘の情報を猛スピードで拡散させている。欧州のような『ファクトチェック』システムが必要」とする。
米グーグルや米フェイスブックなど巨大なプラットフォーマーが情報を独占し、欧州で規制論が出ていることについては、経団連でサイバーセキュリティーに関する懇談会の座長を務める梶浦敏範氏が「ネットの世界は様々な事業者が『ミルフィーユ』のような多重構造でサービスを提供している。特定のプラットフォーマーを規制しても意味がない」と話した。
米中に比べて日本でプラットフォーマーが出てこないことについては、東大大学院の満永拓邦特任准教授が「日本はものづくりは得意だが、ソフトは弱かった」との見方を示した。ただ、あらゆるモノがネットにつながる『IoT』時代の到来で「ものづくりの領域に主戦場が戻ってくる。日本企業にも勝機が生まれる」と期待していた。
日本経済新聞社は2023年6月5日、6日、7日の3日間、「世界デジタルサミット2023」を開催します。世界の有力IT企業のトップや情報通信分野の政策責任者などを国内外から招き、Web3時代の新たな課題や期待について議論します。