米、EU鉄鋼に追加関税発動か 回避協議が物別れ
【ブリュッセル=森本学、ワシントン=鳳山太成】欧州連合(EU)の通商政策担当、マルムストローム欧州委員と米国のロス商務長官は30日、パリで会談し、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限の発動回避を巡って協議した。EUは米国に輸入制限の猶予延長を求めたが、会談で具体的な進展はなかったもよう。複数の米メディアは同日、トランプ米政権がEUから輸入する鉄鋼・アルミニウムに追加関税を発動する検討に入ったと報じた。
米国はEUに対し、高関税の適用を一時的に猶予しているが、日本時間の6月1日昼に期限切れを迎える。会談を受けて欧州委員会は米国が1日から輸入制限を発動するかどうかは「米大統領の決定次第だ」としつつも「現実的に考えれば、期待できるとは考えていない」との声明を出した。
米国の輸入制限は安全保障上の脅威への対処を理由に、輸入する鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の高関税を課す措置。EUは米国が欧州への適用を無条件で除外するなら、自動車分野の通商協議や米産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大などの協議に応じる準備があると呼び掛け、輸入制限の発動を避けるよう求めていた。
ロス氏は会談に先立ち、経済協力開発機構(OECD)の討論会に出席し、米欧の通商を巡って「関税があってもなくても交渉は可能だ。EUが米国に課している関税も多くある」と発言。米国が鉄鋼・アルミの輸入制限に踏み切れば通商協議には応じず、対抗措置も辞さないと強硬な姿勢をみせるEUをけん制した。
フランスのマクロン大統領は30日、「貿易戦争で解決してはいけない」と述べ、EUを輸入制限の対象としないよう米国に求めた。マクロン氏は鉄鋼の過剰生産などの問題の解決に関し「国際社会全体で取り組むのが唯一の道だ」と強調した。OECDや20カ国・地域(G20)といった枠組みの活用が必要と語った。
一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、米政権はEUに対し、猶予期間を延ばさない方向で調整しているという。同紙は、可能性は低いものの米欧が最終的に何らかの合意に達すれば関税の発動を見送る可能性もあると指摘している。トランプ大統領が最終的に判断し、31日に発表する方針だ。