米、北朝鮮のサイバー攻撃に警告 高官協議前にけん制
【ワシントン=中村亮】米連邦捜査局(FBI)と国土安全保障省は29日、北朝鮮のサイバー攻撃に警戒を促す声明を発表した。30日に訪米する北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長は過去のサイバー攻撃に深く関わった人物とされる。非核化をめぐる米朝の高官協議直前の警戒呼びかけには、北朝鮮側を重ねてけん制する狙いが透ける。
声明によると、北朝鮮のハッカー集団「ヒドゥン・コブラ」(隠れたコブラ)が2種類の悪質なソフトを使ってインターネット上の個人情報を盗んだり、遠隔操作をしたりしていると指摘。この集団は「ラザルス」や「平和の守護神」とも呼ばれ、2009年以降に米国だけでなく世界中でサイバー攻撃を仕掛けていると注意を促した。
ただ、米政府は17年6月にも似た内容の声明を発表している。当時はトランプ米政権が北朝鮮に対する軍事行動も辞さない構えを鮮明にしていた時期で、サイバー空間をめぐる戦いでも譲歩しない姿勢を示す狙いがあった。
29日の声明は金正恩(キム・ジョンウン)委員長の側近である金英哲氏の訪米に合わせた可能性が高い。米当局によると、北朝鮮は14年11月、金正恩氏の暗殺計画を描いたコメディー映画「ザ・インタビュー」を制作したソニー米子会社にサイバー攻撃を実施。米当局はこれに関与したのが金英哲氏と断定し、15年1月に制裁対象に加えていた。
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