北朝鮮、敵対解消の意思伝達か 米朝高官がNYで会談へ
米、制裁を特例解除
【ソウル=恩地洋介】北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長は30日、ニューヨークを訪れ、ポンペオ米国務長官と会談する。6月12日の開催で再調整中の米朝首脳会談に向け、非核化合意を巡る協議を進める。北朝鮮側は、米国との敵対関係を解消する意思を示す金正恩(キム・ジョンウン)委員長のメッセージを伝えるとみられる。
金英哲氏は30日午後、北朝鮮外務省のチェ・ガンイル北米局副局長らとともに北京空港を出発し、ニューヨークへ向かった。早ければ日本時間の31日にポンペオ氏と会談する。金氏は2010年に韓国哨戒艦「天安」が沈没した事件に関わったとされ、米国による独自制裁の対象者となっている。今回は米政府の特例で入国制限を免除された。
金英哲氏が訪米する狙いは2つある。1つは米国との敵対関係を解消して対話を継続するトランプ大統領に宛てた金正恩氏の意思を正式に伝達することだ。トランプ氏は24日に米朝首脳会談の中止を表明した際、金正恩氏宛ての書簡で「気が変わった場合はためらうことなく連絡してほしい」と呼び掛けていた。金英哲氏が書簡への返書を持参している可能性がある。
2つ目は、非核化合意を巡る調整だ。板門店ではソン・キム元駐韓米大使(現フィリピン大使)と北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が、首脳会談で交わす合意文書を巡って断続的に協議している。これまでの話し合いを踏まえ、非核化の時期や手順など高度な政治判断を要する問題を一段高いレベルで協議する狙いだ。
北朝鮮の最高幹部メンバーの訪米は、2000年に金正日(キム・ジョンイル)総書記の特使としてクリントン大統領と会談した趙明禄(チョ・ミョンロク)国防委員会第1副委員長以来となる。金正日氏の親書を持参した趙特使は、双方の敵対的関係の解消などを提案し、その後のオルブライト国務長官(当時)の訪朝につなげた。