米ウーバー、淡路島で夏から配車アプリ実験
米ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズは22日、兵庫県の淡路島で同社のアプリを活用してタクシーを配車する実証実験を始めると発表した。県やタクシー事業者と連携、島内の交通環境改善を目指し、検証を進める。タクシー事業者と組んだ実験は初めて。同社幹部は日本で20社超のタクシー会社と配車システム導入に向け協議を始めたと語った。
実証実験を契機に日本で存在感を高められるかが今後の焦点となる。
実証実験は夏をメドに始め、19年3月末まで実施する見通し。タクシー事業者は島内で公募する。原則島内での乗り降りが対象だが、島内から乗車し島外で降りることはできる。来日したウーバーのブルックス・エントウィッスル・インターナショナルチーフビジネスオフィサーは「実証実験は車両数や対象者が小規模だが、観光客に移動手段を提供できる」と意気込みを語った。
利用者はスマートフォンにダウンロードしたウーバーの配車アプリを操作する。現在地や配車の場所などを決めると、配車されるタクシーの運転手や車両番号、到着予定時間などが事前に確認できる。行き先や降車場所も指定できる。日本語が話せない訪日客(インバウンド)でも運転手とあまりやりとりをせず目的地に到着できる。
淡路島は高速バスや高速艇を使って来ることはできるが、その後の移動手段(2次交通)は十分に整備されていない。県や地元としては島内の交通手段を充実させ、観光客の誘客にもつなげたい考え。ウーバーの配車アプリを実験的に導入し島内での利用動向や実績を検証する。
ウーバーは日本を重点市場と位置付けており、今回の実証実験を皮切りにタクシー事業を拡大できるかが課題だ。エントウィッスル氏は「まだ緒に就いたばかりだが、複数の都市で日本のタクシー事業者20社以上と契約に向けて協議している」と明らかにした。
日本では京都府京丹後市と北海道中頓別町でボランティアの運転手の自家用車を使ったライドシェアの実証実験をすでに手がけており、今も継続している。
また飲食店の宅配サービス「ウーバーイーツ」を首都圏や関西圏で実施している。同社の本業はライドシェアだが、日本に合わせてタクシー事業に特化する方針を打ち出している。
同社の配車アプリは世界600以上の都市で利用されており世界的に利用者が多いことが強み。特に米国では抜群の知名度を誇る。19年のラグビーワールドカップや20年の東京五輪・パラリンピックなどのイベントを世界中から観光客の訪問が見込まれることに合わせて、同社のシステムを使うタクシー事業者を増やし配車アプリを日本で普及させることが重要となる。
市場規模や利用者数の多さからエントウィッスル氏は「東京がキーとなる」と話す。しかし最大市場となる首都圏では競争相手がひしめく。日本交通がグループ会社で配車アプリ「全国タクシー」を展開、国際自動車(東京・港)など6社がソニーと組み配車サービスの開発を手掛ける新会社を設立する見通しだ。中国の滴滴出行も第一交通産業と提携し、ソフトバンクも含めた連合で年内にもサービス開始を目指している。
県や地元自治体からすると淡路島の実証実験は観光客誘致のための2次交通の確保に向けた取り組みでもある。かつて本業のライドシェアで日本のタクシー業界と深刻な摩擦を引き起こしたウーバー。本社のトップ交代で矛を収め、ソフト路線に転換、配車アプリで上陸の機会をうかがう。淡路島での実験は首都圏をはじめとして大都市圏へと配車アプリ展開の試金石だ。(志賀優一)