ガザ死者58人に、非難広がる 米大使館移転巡り衝突
【エルサレム=佐野彰洋】トランプ米政権による在イスラエル大使館移転を巡るパレスチナ自治区ガザでの14日の抗議デモで、死者数は58人、負傷者数は2700人以上に膨らんだ。パレスチナ当局が明らかにした。イスラム圏やフランスなどから非難の声が上がる一方で、イスラエルは正当防衛を主張し、米国は擁護に回った。ガザでは15日も抗議行動が続く見通しで、犠牲者拡大の懸念が広がっている。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は14日、イスラエル軍の行動を「虐殺」と呼んで非難し、3日間の服喪を宣言した。15日はパレスチナ人が難民として離散を迫られた「ナクバ(大惨事)」の記念日で、さらに激しい抗議行動が予想される。アラブ諸国の盟主であるサウジアラビアの外務省報道官は「占領軍による無防備な市民への発砲を強く非難する」と述べた。
ガザの衝突や米大使館のエルサレムへの移転問題を協議するため、クウェートは15日に国連安全保障理事会の緊急会合を開くよう要請。安保理も開催を決めた。アラブ連盟は16日に臨時の代表者会議を開く。南アフリカは駐イスラエル大使を、トルコは駐イスラエル大使と駐米大使を召還する。
フランス大統領府は声明で暴力を非難し、マクロン大統領が全当事者と協議すると明らかにした。欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表は全当事者に「抑制的な行動」を呼び掛けた。
イスラエルのネタニヤフ首相は国際社会から過剰な武力の行使だとして批判を浴びている実弾を用いた境界警備について、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスに対する「主権と市民の防衛を続ける」と強調、対応を正当化した。米国は一貫してイスラエルを擁護する。シャー大統領副報道官は「悲劇的な死の責任は直接ハマスにある」と強調した。