イタリア、五つ星と同盟の連立協議前進 なお課題も
【ジュネーブ=細川倫太郎】イタリアで10日、連立政権樹立に向けた動きが本格化した。第1党のポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と、極右「同盟」による連立協議が前進したためだ。合意すれば3月の総選挙から2カ月以上続いた政治空白が解消されるが、一部で政策の違う両党が歩み寄れるかはなお予断を許さない。
五つ星のディ・マイオ党首は、中道右派連合である同盟のサルビーニ党首に対し、連携を打診し続けてきた。これに対し同じ中道右派の政党「フォルツァ・イタリア(FI)」を率いるベルルスコーニ元首相が五つ星を敵視し、同盟が手を組むことに強く反対していた。しかし9日夜に同氏が両党の連立を認めるとの声明を発表し、連立協議の障害が取り除かれた。
ロイター通信は10日、関係筋の話として「マッタレッラ大統領は政権発足のため五つ星と同盟に、さらに協議の時間を与える」と伝えた。
これを受け、五つ星と同盟は政策や内閣の人選をめぐって最終協議に入った。両党は10日、「大きく前進できた」と発表した。EU(欧州連合)の厳しい財政規律に反対する立場などで両党は一致している。一方で両党は移民政策などで温度差があり、意見の溝をどこまで埋められるかが焦点となる。
協議が決裂すれば、大統領主導の実務者内閣の発足か、再選挙が濃厚になる。ベルルスコーニ氏はFIは連立政権には加わらない方針を示し、地方選挙などで同盟との協力を続けるという。
3月4日の総選挙では、五つ星が経済が停滞する南部地域を中心に支持を集め、単独政党として第1党に躍進。一方で複数の政党でつくる政治グループとして最大勢力になった中道右派内では同盟が最多議席を獲得した。前与党の民主党は歴史的大敗を喫した。
どの政党も過半数には届かず、多数派形成に向けた協議が続けられていた。ただ、交渉は袋小路に陥り、大統領は経済政策やEUへの対応が滞ることを強く懸念。今月7日には12月末までの暫定政権として中立的な内閣を提案していた。
イタリアでは大統領が組閣ができそうな人物を首相候補として指名する。新首相候補は閣僚を選んだうえで、10日以内に上下院の信任を受け、正式に新政権が始動する。