リクルート、人材世界一へ買収攻勢 IT分野を拡充
リクルートホールディングスは9日、求人関連の口コミサイトを運営する米グラスドア(カリフォルニア州)を12億ドル(約1300億円)で買収すると発表した。これにより、リクルートHDが2010年以降に海外M&A(合併・買収)に投じる金額は計約5800億円に達する。積極的な買収戦略をテコに人材会社として世界トップを目指す。
「人材ビジネスとIT(情報技術)を融合させた『HRテクノロジー』のグローバルに急拡大する市場を取り込む」。荒井淳一執行役員は9日、東京都内で開いた記者会見で買収の狙いを説明した。
グラスドア社は07年に設立したスタートアップ企業で、77万社を超える企業の口コミ情報を持つ。会社の従業員や面接を受けた人の口コミを集め、新たに仕事を探す人が参考にする情報を提供するサイトを運営している。北米を中心に毎月5900万人が利用している。
これを日本でも俳優の斎藤工さんが出演するCMでおなじみの求人情報の検索サイト「インディード」と組み合わせ、求職者や企業の希望に合った確度の高い人材マッチングにつなげたい考えだ。グラスドア社の買収を担当したリクルートHDの出木場久征専務執行役員は「口コミデータはインディードの求人情報の検索機能と補完関係にある」と話す。
12年5月、同年4月に社長に就任したばかりの峰岸真澄社長は12年3月期の決算会見で「20年に人材会社で世界ナンバーワンを目指す」という目標を掲げた。12年に求人サイトのインディードを約1000億円で、16年にはオランダの人材派遣会社のUSGピープルを1897億円でそれぞれ買収。2010年代だけで人材分野を中心に約4500億円を投じてきた。
これにより12年3月期5%弱だった海外売上高比率は足元で4割を超える水準になった。18年3月期の連結売上高は12年3月期の2.7倍に拡大し、初めて2兆円を超えたもようだ。人材派遣分野では世界4位に躍り出た。売上高で3兆円を超えるスイスの人材最大手アデコとの差はまだ大きいものの、6年間で急速に差を縮めている。
スマートフォン(スマホ)の普及でインターネットで仕事を探す人が増えているなか、世界最大手との残り1兆円の差を埋める手掛かりとなるのがHRテクノロジーだ。12年に買収したインディードの売上高は16年12月期に11億ドル(約1200億円)と、買収当時の12年12月期の1億5600万ドル(約170億円)の7倍に拡大した。
グラスドアの18年3月期の連結売上高は1億7100万ドル(約190億円)にとどまり、営業損益は2270万ドル(約24億円)の赤字だが、将来の急成長の期待は大きい。荒井執行役員は「テクノロジー会社は投資と利益が出るタイミングが異なる」と話す。株式市場も長期的な収益貢献を期待し、午前10時の発表を受けて同社株の終値は2717円と、前日比で3.01%上昇した。
6年前に掲げた「人材世界一」との目標が夢物語でなくなってきた。20年まであと2年。トップを目指すうえでグラスドア買収をいかに収益拡大につなげるか大きなカギを握りそうだ。
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