親として サッカーを始めた長男に思う
僕の10歳と8歳の息子はレスターの小学校に通う。それほどサッカー好きというわけではなかった長男は、1年ほど前から地元のクラブとスクールで本格的にサッカーを始めた。時間が許せば、学校や練習への送り迎えをするし、試合にも足を運んでいる。
英国人のチームメートとピッチを走る長男を見ていると「もっとやれるんじゃないか」と思ってしまう。技術的な部分より、仲間に対して遠慮がちにプレーしていることが気になる。なかなかボールに触れず、持ってもすぐ味方へパスを出してしまう。
「だって、『ヘイ!』って声が聞こえたから」
そう答える息子に僕が「だけど、ドリブルとかできただろう?」と提案すると「今度はそうするよ」。しかし、周りに遠慮する様子が改まる気配はあまり見られない。
本人は充実感を抱き、毎日が楽しそうだ。そんな姿を見ながら僕は、このままではサッカー嫌いになるんじゃないかと心配したり、自分の殻を破れたらもっとうまくなれるし今以上に楽しめるのにと、もどかしさを覚えている。
長男は慎重派だ。周囲の様子をうかがい、考えてから行動する。僕にもそういう一面はあるが、小中学生時代に指導してくれたコーチとの出会いで劇的に変わった。「すべて、ダイビングヘッドでゴールを決めろ」という指導で、「飛び込む」ことの重要性を教えてくれた厳しい人だ。
お調子者で、他人の気持ちを配慮をせず、行動してしまう僕を叱ってもくれた。ダイビングヘッドをしようと飛び込み、失敗すれば、地面に身体を打ちつける。何度もその痛みを味わううちに飛び込むことの面白さを知り、勇気を得られた。周囲に嫌われることや失敗を恐れているような長男にも飛び込む勇気を知ってほしい。失敗して叱られても、その失敗から数多く学べることに気づいてほしい。
でも、それは教わることではない。自ら体験し、感じ取らなければならない。自信の種になる成功体験は与えられるのではなく、自分で探し、つかまなければいけない。そのために長男にはどんなアプローチをすればいいのか。その難しさを感じている。
移籍に伴う挑戦は僕だけでなく、家族も同じだ。息子たちも彼らなりに新しい環境に順応する術を身につけなければならない。その難しさがわかるからこそ、彼らの力になれる親でありたい。
真逆のキャラクターの2歳差の兄弟は日々けんかが絶えない。「嫌なところじゃなくて良いところにも目を向けてみれば」と諭しても、彼らにはまだ理解不能のようだ。
「慎司とお兄ちゃんにホンマにそっくりやわ」
孫を見ながら、2歳差の兄弟を育てた母が笑う。親になって、わかる親のありがたみがある。
(レスター所属 岡崎慎司)