中国「一帯一路」警戒、日米同盟が重要に アジア太平洋フォーラム
【シリコンバレー=高橋里奈】日米の有識者が安全保障問題を話し合う「第2回アジア太平洋地政経済学フォーラム」が4月30日、米カリフォルニア州のスタンフォード大学フーバー研究所で開かれた。パネル討論では経済や安全保障面で覇権を争う中国を警戒する声が続出。中国の広域経済圏構想「一帯一路」をめぐり、日米同盟をはじめとするインド太平洋地域での協力関係が重要になるとの意見が出た。
フォーラムは日本経済新聞社とフーバー研究所が共催した。
「一帯一路は新しい中国式の国際関係の象徴になった」と東京大学の川島真教授は強調した。習近平(シー・ジンピン)国家主席が唱える一帯一路は、中国と欧州を陸路(一帯)と海上(一路)でつなぎ、インフラ整備を軸に周辺国への影響力を拡大する構想だ。川島教授は中国が経済や安全保障のほか、中国語の普及など文化面でも存在感を高めていると指摘した。
なぜいま中国が一帯一路を加速するのか。慶応義塾大学の神保謙教授によると、欧州がウクライナ危機や難民問題にかかり切りになり「中央アジア、ユーラシア大陸が真空状態になった」。「中国が一帯一路を通じて時機をとらえようとしている」と警鐘を鳴らした。
土屋大洋慶応大教授は「中国は一帯一路だけでなく、サイバー空間や海底(ケーブルによる通信)でも別の道をつくろうとしている」と説明。海外のネットサービスを遮断し、独自の中国産サービスを普及させることで「人々の考え方をコントロールし、監視しようとしている」と懸念を示した。
政策研究大学院大学の田中明彦学長は中国による開発援助の一部は「債権の持続性、途上国の返済能力を考えて実施されていない」と指摘する。「途上国が負債に苦しむことがないよう、相互補完的な方法が必要だ」と提案した。
「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げる日本と米国にとって、中国への対抗策はあるのか。神保慶大教授は「地政経済分野での競争は日米同盟にとっても重要」と訴えた。
安全保障面で日米の連携を強化すべきだとの声もあがった。渡辺秀明前防衛装備庁長官は「先端的な防衛技術の開発は(日米)政府間では協力してきたが、これからは産業界同士の協力がいっそう重要になる」と指摘。米防衛大手ノースロップ・グラマンのデビッド・ペリー副社長は「防衛という視点ではAIは(日米)同盟においてまだうまく利用されていない」と語った。