ガンジス川の沐浴「危険」 汚染深刻と地元紙警鐘
ヒンズー教徒が「聖なる川」とあがめるインドのガンジス川で、巡礼者が沐浴(もくよく)するのは「危険」と地元紙が警鐘を鳴らしている。昨年の政府調査で、最大で基準値の23倍のふん便性大腸菌が検出された地域もあり、汚染が深刻だからだ。しかし聖地の信者たちの危機感は薄い。
中流に位置する聖地、北部バラナシでは川岸に沐浴場があり、多くの信者が水に入ったり口をゆすいだりしている。インドの多数派ヒンズー教徒はガンジス川の水に「罪を洗い流す効果がある」と信じている。
インド紙のヒンドゥスタン・タイムズは3月末、バラナシの調査地点では、100ミリリットル当たり500個という基準値に対し9~20倍の大腸菌が検出されたと報じた。「生活排水が処理されないまま流れ込んでいるのが原因。処理能力は約4分の1しかない」とする地元当局者の話を載せた。
流域人口が増え、排せつ物のほか工場廃液も増加、川岸で火葬された遺体や遺灰も流されている。
日本政府は円借款を通じ、バラナシで大型下水処理施設の建設や下水管の整備を支援。施設は今年中に稼働する見通しで、国際協力機構(JICA)の担当者は「川の浄化はインド政府にとっても大きな課題」と話す。
首都ニューデリーから訪れたラガブ・ジョディさん(42)は、上半身裸で沐浴をして「心が清められる。濁っていても、これは聖水だ」と恍惚(こうこつ)の表情。水質汚染を伝えるニュースを「ガンジス川のことを全く理解していない」と一蹴した。(バラナシ=共同)